新型インプレッサのプロポーションは古クサイのか?
2017/4/9 公開
タイトルを見て、「このヤローはアンチ・スバルだな!」と思われたオッサン読者諸兄に申し上げます。
誤解です。
むしろワタクシメ、スバル・シンパでございます。(CVTは嫌いですが)
実際、2代目ワゴンと4代目B4のレガシィを5年ずつ所有していたこともあります。
ウソこくでねぇ!
とおっしゃるオッサンがいらっしゃるかもしれませんので、
2台のレガシィを保有した証拠として、歴代の愛車を背景に、すくすくと成長する子供たちと、水平方向に成長するワタクシメの姿を納めた写真をスライドショーにしてお届けします。
BGM はもちろん、
♪ときを超え~て 君を愛せるか ほんとオの君を守れ~るか~
エッ、そんなもん見たくない・・・
そうですか・・・残念ですが、じゃア、止めときます。
さて、2016年10月に登場した5代目インプレッサです。
最大のトピックは、新世代プラットフォーム・SUBARU GLOBAL PLATFORMの採用でしょうか。
いくつかの雑誌等の試乗記事を読んでみますと、
「ハンドリング、乗り心地は優れるが、熟成不足だよね。せっかくの新しいプラットフォームなんだから、これからの熟成に期待しよう。」
「エンジンは水平対向だし、ミッションはCVTだし、まあ、こんなモンかね・・・」
などなどの評価が見られます。
それら記事の中で、デザイナーの方々が「プロポーションが古クサイ」と評価されているのが目につきました。
プロポーションが古クサイ???
意味が解りません!
「古クサイ」を言い換えれば「流行から外れている」ということになるわけですが、
ワタクシメ、「流行」とは全く無縁のオッサンゆえ、一体何のことやらサッパリでございます。
実際に新型インプレッサを見ても、まあ、斬新さとか一歩先行くような先進性は感じませんが、古さを感じることはありません。
では何故、インプレッサのプロポーションは古クサイと評価されるのか?
流行とは無縁のワタクシメが、無謀にもその謎を解き明かそうと試みるのがこの記事の趣旨でございます。
クルマのプロポーションといえば、トドメを刺すのはロングノーズ・ショートデッキです。
直訳すれば、長いボンネットに短いトランク。
スポーツカーには大出力エンジン。
大出力エンジンといえば直列6気筒かV型8気筒。
長い長いシリンダーブロックを納めるには長~いエンジンルームが必要で、そうなれば当然ドライバーが座るキャビンは後ろに下がり、トランクは短くなる。
つまりコウです→
実際にはどんなクルマかと言えば・・・
ジャガー・Eタイプ
シボレー・コーベット
トヨタ・2000GT
メルセデスベンツ・SL
古今東西の大出力エンジンを想起させる長~いボンネットのロングノーズ・ショットデッキのクルマ、枚挙に暇がありません。
1990年代、小型FF車ではキャブフォワードのプロポーションが流行り始めました。
キャブとはキャビン、乗員の乗る車室で、フォワードは前方の意味なので、車室が前方にあるように見えるスタイルです。
こんな感じです→
視覚的な重心が前方にできるため、前に飛び出しそうな躍動感を表現できるそうです。
また、フロントガラスを前方に配置できるので、車室も広くすることができます。
キャブフォワードでワタクシメが一番に思い出すのが先代、先々代のホンダ・シビック。
まるほどAピラーの付け根がウンと前方に寄せられていて、ボンネットが短く見えます。
トヨタ・プリウスとか、フォード・フォーカスとか、プジョー207とか、みんなこのキャブフォワードでした。
ところがところが、女性の眉が時代の流れと共に太くなったり細くなったりするのと同様、前に出たキャビンは後ろに下がることになります。
キャブフォワードに対してキャブバックワードと呼ぶそうです。
BWMやメルセデスベンツが1シリーズとかAクラスの小型ハッチバック車を作ったのに発端があるそうで、
「やっぱボンネットは長い方が高そうに見えるんじゃね?」
ということでしょう。
1シリーズやAクラスより後発のマツダ・アクセラも、値引きしたくないから高級そうに見えなくてはならないので、当然キャブバックフォワード。
上のシビックと比べると、明らかにボンネットが長く見えます。
では、キャブフォワード代表の先代シビックと、キャブバックワードの代表としてアクセラを比べてみましょう。
全長の違いはありますが、あきらかにシビックのAピラー付け根はアクセラのそれより前方にあり、ボンネットは短い。
キャブフォワードとキャブバックワードの違いがよく分かります。
続いて、古クサイと評されるインプレッサを見てみましょう。
アクセラと比べると、ボンネットが短くキャブバックワード的には見えません。
ところが、この2車の側面の輪郭を比べると・・・
どうでしょう?
上の写真で見ると、アクセラのボンネットは長く、キャビンは後退しているはずなのに、両車ともAピラーの位置、角度共にほぼ同じ。
イエ、断じてねつ造はしておりません。
写真の撮り方によって若干の違いはあるでしょうし、その写真からワタクシメが手動で輪郭をなぞった線なので、まったく正確と言うわけではありませんが、
それにしたって両車のAピラーもボンネットの長さも同じように見えます。
ちなみにアクセラの全長は4470mm、インプレッサは4460mmなので、全長の違いはそれほど考慮しなくてもよいでしょう。
これは一体どういうわけでしょう・・・?
賢明な読者オッサン方ならもうお気づきですね。
違うのはフロントホイールの位置。
むろんアクセラでは、キャビンが後方にあるように見えるための細かなデザインがなされているのでしょうけれど、主な理由はフロントホイールの位置らしいです。
フロントホイールが前方に寄っている → Aピラーが後ろに寄っているように見える → ボンネットが長く見える
ということなのでしょう。
要はコレです→
ンなこと言うなら、インプレッサだってフロントホイールを前に寄せりゃあイイじゃねえか!
そう、オッサン方々がおっしゃるよう、設計の時点でインプレッサもフロントホイールを前方に寄せれば、今流行りのキャブバックワードになれたのですが、
そこは問屋が卸さない、スバル固有の苦悩が存在するのです。
スバル固有の苦悩とはナニか・・・
デザインのコンセプトを検討する時点で、インプレッサをキャブバックワード的にしたかったのかどうかは分かりません。
しかし、仮にそうしたかったとしても、上記の理由によってフロントホイールを前方に移動するわけにはいかず、流行りのプロポーションにはできなかった。
しかし世のスバリストのオッサン方、落胆してはなりません。
流行りモノが決してすぐれているわけではないコト、流行りモノは流行が過ぎ去ってしまえばすぐに陳腐化すること、流行なんかにはとらわれない普遍的な良いモノだってあることは、
皆様の長~いご経験の中から学ばれているはずです。
だって、ホラ、
流行ってようが、流行ってなかろうが、
女性のスカートは短い方がお好きでショ!
オイオイオイ、スバルの水平対向縦置きがダメなら、アウディなんかもっとダメだろう!
と、おっしゃるオッサン、鋭い!
スバルの4気筒は水平対向だからエンジン長は2気筒分です。
でもアウディは直列ですからそのまま4気筒分の長さで、スバルよりずっとフロントホイールは後ろになってしまうことになります。
では、ライバル3車、アウディA4、BMW3シリーズ、メルセデスベンツCクラスを比べてみましょう。
ををを!
なるほどA4のフロントホイールはだいぶ後ろに寄っていますね。
アウディA4のプロポーションが古クサイという評判なのかどうかは知りませんが、ライバルと比べてフロントオーバーハングが長くて、スポーティーに見えないのは間違いない。
オイオイオイ、3シリーズだってCクラスだって4駆があるだろう。なんで同じ4駆でアウディだけフロントホイールが後ろ寄りなんだ!
と、おっしゃるオッサン、さらに鋭い。
確かにその通りです。
では、Cクラスの4駆の仕組みを見てみると・・・
なんという力技でしょう!
高速で回転するドライブシャフトを、高速で回転するクランクシャフトの下を通してしまうなんて!
ですので、当然オイルパンはコンなことになっちゃっています。
ワタクシメの記憶が確かなら、このオイルパン貫通式ドライブシャフトを初めて採用したのがホンダ・インスパイア。
ググったら、1989年のことだそうです。
直列5気筒、縦置き、FFというワケのわからんスペックでしたが、こういうワケのわからんことをするホンダが好きでした(^^)!
話を戻して、アウディとCクラスのレイアウトを比べてみましょう。
今さらジローな話ですが、この例も極端にデフォルメしてありますので、予めご了承を。
図では、両車のエンジン前端を合わせてあります。
ベンツのドライブシャフトのオイルパン貫通方式が、アウディのドライブシャフトはトランスミッション前端方式に比べ、如何にフロントホイールを前方に寄せることができるかがよく分かります。
おいおいおい!
三度、オッサンからクレームが入ります。
じゃあ、アウディだってオイルパン貫通方式にすりゃイイじゃねえか!
そう、そこがアウディの苦悩なのです。
BMWやベンツの場合、4駆でないグレードはFRです。
しかしアウディは、4駆でないとFFなのです。
FRの場合、できるだけエンジンを後ろに積みたい。
重量物が車体重心に近ければ鼻っ先が軽くなり、峠道でもスイスイとスポーツカーのように向きが変わります。
ところがFFではそうもいきません。
急発進をするときを考えてみてください。
アクセルペダルをガバッと踏み込むと、フロントが浮き上がり、リアタイヤに車重がかかります。
このとき、フロントタイヤの荷重は抜け、フロントタイヤを路面に押し付ける力が弱まり、フロントタイヤがスリップすることになります。
これを防ぐため、FFではある程度の重さをフロントタイヤにかけなければならないのです。
フロントタイヤを前方に押しやって、タイヤを車体の四隅に配置してスポーティーに見せたい。
でも、エンジンはある程度前に出してフロントタイヤに荷重をかけなきゃならない。
でも、エンジンは縦置きで前方に突き出しているから、重いものがどんどん重心から離れてしまう。
じゃあ、エンジンとフロントホイールをセットで後ろに下げれば・・・タイヤは四隅から離れてスポーティーに見えなくなってしまう・・・以下、繰り返し
いっそのこと、エンジン横置きしてしまえば楽なように思えますが、横置きにしたいのと同じくらいたくさんの横置きにはしたくない理由があるのでしょうね。
アウディの、そしてスバルの苦悩は続きます。。。
ということで、この記事の結論は、
他人様と違うことをしようと思うと、ナカナカどーして茨の道ですな~
ということですね。
アレ? そんな話でしたっけ・・・?
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ワタクシメが開発に参加した、自動車整備士資格取得のための
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i-Tasuは教育機関向けなので、このサイトを覗いていただいている読者方々の大部分にはあまり関係がないかと思いますが、
「ふーン、こんなのもあるんだァ」
くらいに思っていただけると幸いであります。
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完
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