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オートマのまとめ

第6回
ステップ式AT 変速部 その1

2015/04/15 公開

今回から、下の写真の変速部についてお話してまいります。
lever
前回までにお話しいたしましたよう、かつてはトルコンが「主」変速装置であり、この変速部は「副」変速装置だったのですが、今やここがステップ式ATの心臓部であります。
さてこの心臓部、一部例外を除いては遊星ギアの組み合わせによって構成されています。
その遊星ギアは、トヨタハイブリッドシステムのページでもご紹介しましたが、いま一度。

下図を見てください。遊星ギアの構造です。
真ん中の赤い歯車がサンギア。
外側の紫の歯車がインターナルギア。
4つある水色の歯車がプラネタリーピニオンで、プラネタリーピニオンをつないでいるのがプラネタリーキャリアです。
header 下の動画をご覧いただければ、これらのギアがどのように動いているのか、概要をつかんでいただけると思います。


で、概要がつかめたところで下のアニメーションです。
「減速」、「増速」、「逆転」のボタンをクリックしてください。
これらのギアの組み合わせがどのように作動するのかお分かりいただけると思います。
thumb07
《画像をクリックしてください》

例外もありますが、一般的に3~4速オートマでは2組、5~6速オートマでは3組、7~9速オートマでは4組、この遊星ギアのセットを使用して変速させます。
話がそれますが、上記の例外とは「ラビニヨ」です。

♪チョット待って、チョット待って、オニイサ~ン♪
♪ラビニヨ・プラネタリ説明してよ!

前回で、
「いつロックアップするの?」「今でしょ」と答えたオッサンは古い。
と申し上げました。
なので、新しメのをちょっと入れてみました。(2015年4月現在)
たぶん、しばらくしてから読み返すと、とても恥ずかしい気持ちになると思います・・・・

で、ラッスンゴレライ・・・じゃなかったラビニヨ・プラネタリです。
過日、ワタクシメは某自動車雑誌に、レクサスなどに採用されているアイシンAW社製の8速ATには、「プラネタリー1列に、ラビニヨ式プラネタリーを組み合わせ・・・」との記述を発見しました。
他の雑誌に掲載されたアイシンAW社製8速ATのカットモデルを穴のあくほど眺めてみても、なるほど本来必要であるはずの遊星ギアセット4つを見つけられません。
そこで堕落したワタクシメは、

ああ、世の中には頭のいい人がたくさんいて、ラビニヨだかブラマヨだかの仕組みを使って、プラネタリーギアを4セット使わなくても8速ATを作っちゃうんだな~

と、静かに好奇心の芽を摘み取りました。

イヤ、それは正確ではありません。

一応ググってみたんです、「ラビニヨ」を。
しかし検索にヒットするのはメーカーの技術資料か特許関係のものが中心で、いったいラビニヨが何であるかの説明をみつけることができなかったのです。
しかし、この稿を書くにあたって一念発起。
再チャレンジです。
もちろん、「ラビニヨ」で何度ググったところで結果は同じです。
そこで見つけました。ラビニヨの英語名。

Ravignawxがソレらしい。 で、「Ravignawx」でググれば・・・やっとお目当てのサイトを見つめました。
難関辛苦の果て(まあ、15分くらいですけど・・・)、たどり着いた結果を皆々様にお知らせします。
下の画像の説明を読みながら、タップして進んでください。


実を申しますとこのプラネタリーギア、ワタクシメは存じておりました。
いえ、名前は知らなかったのですが、某メーカーの資料で、この形を見たことがあったのです、
自分の中では、1.5個分プラネタリーギアセットと勝手に名付けて納得しておったのですが、今回、その名前を知るに至った次第でございます。
これで明日からは、知人に大きな顔をすることができます。

ああ、レクサスの8速ね。アイシン製のラビニヨ使ってるやつでしょ。
えっ? 知らない? ラビニヨを!





閑話休題

よし、遊星ギアについてはよく分かった!
が、入力とか、固定とか、出力ってのはナンのこっちゃ?

かしこまりました。では、ご説明いたします。
では、1組のプラネタリーギアセットを使った、2速ATの増速で考えてみます。
上のアニメーションでいうと、増速させるためにはプラネタリーキャリアから入力し、サンギアから出力、インターナルギアを固定しなければなりません。

IO1
では、まず入力から。
これは簡単ですね。
エンジン側にあるトルコンにプラネタリーキャリアの軸ををつなげばいいのです。
IO2
同様に出力も簡単ですね。
サンギアの軸をタイヤにつながるプロペラシャフトにつなげればよいのです。
IO3
で、問題はインターナルギアの固定です。
ナニに固定するのかと言えば、トランスミッションの外側のケースに固定し、
どうやって固定するかと言えば、油圧制御の多板クラッチを使います。
OP1
インターナルギア固定のイメージ図です。
内側には当然プラネタリーキャリアと噛み合う歯があるのですが、実はこのインターナルギア、外周にも図のように凸凹があります。
OP2
内周に凸凹のあるクラッチ板を複数枚、インターナルギア外周の凸凹に合わせて嵌め込みます。
これで、図中のクラッチ板(緑色)は、インターナルギアと共に回転しますが、インターナルギア軸方向にスライドすることもできます。
OP3
次にトランスミッションケース内部です。
ここには、インターナルギアの外周より大きめの、やはり凸凹をもった構造部があります。
OP4
インターナルギアの外周と同様に、この凸凹にもクラッチ板をはめ込みます。
ここのクラッチ板(水色)は、動かないトランスミッションケースに嵌め込まれるため、回転することはできませんが、インターナルギア軸方向にスライドすることができます。
OP5
今度は、インターナルギアとトランスミッションケースを組み合わせてみます。
が、見づらくなるのでトランスミッションケースは省略しますので、脳内補完してください。
インターナルギアに嵌合されたクラッチ板(緑色)と、トランスミッションケースに嵌合されたクラッチ板(水色)が交互に並びます。
これらをまとめると、下の動画になります。
オイルポンプでつくりだしたATFの油圧で、インターナルギアとトランスミッションケースの間のクラッチ板をギュッと押し付けます。



どうでしょうか?
インターナルギアが「固定」される理屈をお分かりいただけましたでしょうか?



以上のように、プラネタリーギアセットの各要素(サンギア、インターナルギア、プラネタリーキャリア)をトランスミッションケースと固定するものを「ブレーキ」と呼びます。
ブレーキと同様に多板クラッチを利用して、プラネタリーギアセットの各要素同士、たとえば1列目のプラネタリーギアセットのサンギアと、2列目プラネタリーギアセットのプラネタリーキャリアを接続するものを「クラッチ」と呼びます。
次回は、ブレーキとクラッチの作動を利用したステップ式ATがどのように変速するかについてお話しさせていただきます。

続く


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