CAN

- 最終回 オッサンとしてCANとどう向き合うべきか -

2014/06/11 公開

飲み屋のミクちゃんが言いました。
アタシのクルマ、ライトが点かないのよね。だから夜は出かけられないの。

オッサンとしては慎重にならざるを得ません。
まず判断しなければならないのは、「夜は出かけられない」の部分です。
これは「オッサンに誘われたって、絶対に行かないから」の意が含まれているかもしれないのです。
もしそうだったら、そんな女は放っておきましょう。そんな断り方をする女にロクな女はいません。
で、本当にクルマのライトが点かないようであれば、賢明なオッサンは片側だけなのか、両側とも点かないのかを尋ねるはずです。
さあ、ここからが勝負です。ライトを直してあげられれば、どんなご褒美が待っているかわからないのですから!
点かないのが片側だけなら話は難しくないでしょう、バルブ切れが一番クサい。
最近のクルマはバルブの脱着も一筋縄でいかないモノもあるようですが、そこは手先が器用なだけが取り柄のオッサン、何とかなるはずです。

ヨッ! この器用貧乏!

問題は両側とも点かない場合です。
オッサンの脳裏には、瞬間的に例の配線図が浮かびます。
これです。

headLamp

もし、ミクちゃんのクルマがCANでなければ、12Vのサーキットテスターを持っているオッサンは原因を突き止め、ミクちゃんの謝意を得ることが出来るでしょう。
ではここで、意を決してさらに質問をしましょう。
ミクちゃんのクルマは何? と

1992年式 アルファロオ・スパイダー

やりました! 間違いなくCANではありません。もちろん配線図が無ければなりませんが、これでテスターだけでなんとかなります!
でも、ミクちゃんは諦めましょう。
そんな個性的な車に乗っている女にオッサンが立ち向かえるでしょうか?
万が一、ちょっと仲良くなれたところで、オッサンがプレゼントしたバックやアクセサリーは日を置かずして買い取り屋に流れ、現金を握りしめたミクちゃんはアルファのパーツ屋に走るのですから。

ではミクちゃんが最新の国産コンパクトカーの名前をあげたとします。
もちろんCANです。
やはり・・・ミクちゃんは諦めましょう。
いや、ミクちゃんを諦める必要はないですね。ただし、「ライトを直す  -->  感謝される  -->  仲良くなる」作戦は見直すべきです。
基本的に、CANには手も足も出ません。



たとえばライトスイッチのコネクターにテスターを当ててみましょう。
デジタルテスターなら、おそらく測定不能です。
アナログテスターなら、意味不明な電圧を指すはずです。
では、オシロスコープを繋いでみましょう。
オシロスコープとは、電気回路内の波形を表示させる測定器です。
メカ好きオッサンの1万人に1人くらいは、もしかしたらオシロスコープを持っているかもしれません。
すると、こんなものがオシロスコープの画面に表示されるはずです。

waveForm

意味わかんねッ!

と、叫んだオッサン、正解です。
誰にもこの波形の意味など解りません。いや、そもそも波形自体に意味なんかないのです。
ヘッドライトを制御するCUは、これらの波形の組み合わせでスイッチの位置を検知しているらしいのです。

下の図を見てください。小学校の理科で習ったもっとも簡単な電気回路です。

waveForm

この回路に多少のものを付け加えますが、クルマのヘッドライトの配線図なんて、基本的にコレのはずでした。
実際に電気を見ることは出来なくとも、電気の動きが想像できるような配線図でした。
しかしCANはオッサンからすべてを奪い去りました
じゃあ、オッサンはどうすればいいのか?

結論

CANには手を出すな!

もう、いいよ・・・と怒らないでください。
そもそもCAN自体が故障を起こすことがほとんど無いようですし、もし壊れても手出しのしようがありません。
それに、たとえミクちゃんのクルマを直してあげたところで、ご褒美などありません(キッパリ
下心丸出しのスケベイなオッサンが、「じゃあ今度、俺がクルマ診てやるよ」と鼻の下ダラダラで言ったところで、結果は火を見るより明らかなのです。

だから、
各コントロールユニット間のやり取りが、こんなんでできているんだとだけ知っていれば十分です、きっと。



ちなみにこのCAN、いったい何時頃から市販車に採用されたのでしょうか・・・?
ググってみました。
やっはり、世界初は丸に三本線のアイツでした。1990年のSクラスからだそうです。
そう言われてみると、ワタクシメが某輸入車の仕事をしていた頃、94年型か95年型からCANが導入されたような・・・と記憶が蘇ってきました。
ので、もう四半世紀も前のことになりますから、このサイトのタイトル「どうよ 今のクルマ」とは合致していません。
「昨日のことのようだ・・・」とは申しませんが、四半世紀前とは・・・
イヤハヤ、歳はとりたく・・・(涙



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