ナンでもカンでも電動化 その2
2017/05/22 公開
手前まではそれなりに広い道なのに、踏切に入った途端キュッと細くなる道路を時折見かけます。
「踏切も拡幅すればいいのに・・・」
と、誰もが思うにもかかわらず、中々そうはなりません。
踏切に関わらず、誰もが「こうすればいいのに」と思うのにもかかわらず、そうはならない。
というハナシは、世の中のどこにでも転がっています。
- お金がない
- だれに責任があるのかよくワカラン
- 実は、みんなが思っているほど効果はない
- ただただ、メンドクサイ
理由は様々です。
機械制御をこよなく愛するワタクシメではありますが、クルマの機構がどんどん電子制御化されていく中で、ドーしてこれが電子制御化されないのか、不思議でならなかった部品がサーモスタットです。
その昔、熱帯魚を飼育したことのあるオッサンならご存知のサーモスタットです。
熱帯魚と言えば、昔はグッピーがメジャーでしたが、今では経済的に成功したオッサンなら、アロワナとかポルカドットスティングレーになるのでしょうか。
スティングレーで思い出しました。
クルマでスティングレーと言えば、シボレー コルベット スティングレーです。
クルマのメーカー名、車名、またはマスコット名には、よく動物の名前が使われます。
その選択基準は、「カッコいい」、「速そう」、「強そう」が基準であることは疑いがありません。
- ジャガー(南米の豹の一種。カッコいいし、強そう)
- ファイティング ブル(ランボルギーニーのマスコット。闘牛の意。文句なしに強そう)
- 跳ね馬(フェラーリーの社章。馬ですから、速いわけです)
- ブルーライオン(プジョーのエンブレム。百獣の王ですから、強くないはずがない)
車名で言えばキリがありません。
コブラ(毒蛇)、ピューマ(北米の豹)、クーガー(北米の豹)、ファルコン(ハヤブサ)、ムスタング(野生馬)、ホーク(鷹)、インパラ(中距離なら世界トップクラス?)、レパード(豹)、チーター(短距離世界最速)・・・などなど
どれも、「カッコいい」、「速そう」、「強そう」のどれかが当てはまります。
でも、スティングレーはエイですよ?
青い海をゆったり泳ぐ姿は優雅ではありますが、カッコよくも、強そうでも、速そうでもありません。
なのになぜ、シボレーはスティングレーの愛称を付けたのでしょうか?
形は、上下に薄っぺらくて、確かにエイっぽい。
ソレにしたって、エイとは・・・
ちなみに、知人女性の一人は、エイを「ナンカ、気持ちワルい」と表現します。
少数意見ではあるとは思いますが、「気持ちワルイ」動物の名前をクルマにつけるというのはドウなのでしょう・・・?
トヨタ スープラ 2500GT エイ
あるいは
日産 シルビア 2000ターボ エイ
あまり購買意欲をそそられません・・・
もしかしたら、アメリカ人はエイに「カッコいい・強そう・速そう」のどれかのイメージを持っているのでしょうか?
今度、機会がありましたら、アメリカ人に尋ねてみたいと思っております。
ああ、そうだ。
某小型車メーカーにワゴンR スティングレーという名前のクルマがあることはココでは内緒にしておきしょう。
閑話休題
サーモスタットに話を戻します。
グッピーの水槽の中に備えられていたサーモスタットは、温度センサー兼スイッチでした。
水温が規定値以上になるとOFFになって、ヒーターを切る。
規定値以下になればONになって、ヒーターを入れる。
クルマのサーモスタットは、温度センサー兼バルブです。
まずは、その取り付け位置と働きを見てください。
ちなみに、上図のサーモスタットの位置は、エンジンから出てきた冷却水を制御するので「出口制御」。
冷却水がラジエーターからエンジンに入る位置にサーモスタットを配置するのが「入口制御」です。
続いて、サーモスタット内部の構造と作動です。
いかがでしょう?
見事なまでの機械制御です。
しかしながら、燃費! 燃費! 燃費! のご時世です。
電子制御化して、もっと緻密に制御すれば冷却水温度を望んだ温度にすることができ、理想的な状態でガソリンを燃焼させて燃費向上に貢献する・・・・
と思うのですが、電子制御サーモスタット、さほど普及していないようです。
BWMやフォルクスワーゲンなどでは採用されているようですが、ググってみてもそれ以外には出てきません。
ちなみに、電子制御サーモスタットではなく、Map controlled thermostatと呼ばれるようで、日本語にすればマップ制御式サーモスタットでしょうか。
あまり流行らないのは、値段の割に効果が小さいのでしょうか?
実はワタクシメ、この電子制御サーモスタットはモーターかソレノイド(電磁石)によって、全閉から全開までフル電子制御していると想像していたのですが、ググってみたらちょっと違いました。
ドイツの部品メーカー・マーレー(ピストンで有名ですよね)と、
アメリカの部品メーカー・ボルグワーナー(コチラはオートマで有名)の電子制御サーモスタットの動画へのリンクを貼りました。
これらの動画によると、普通のサーモスタットのピストンの中にヒーターを仕込ませておいて、冷却水温度的には全開になっているピストンを、ヒーターに熱を発生させることでさらにワックスを膨張させてバルブをさらに開く仕組みのようです。
いわば、半電子制御。
なんだ! つまらん!
と、嘆くワタクシメと
ををを! 機械制御がしぶとく生き残ってる!
と、歓喜するワタクシメがおります。
ナカナカ、難しい年頃でございます(笑
前述しましたが、時世は、燃費! 燃費! 燃費! です。
にもかかわらず、あまり電子制御サーモスタットが普及しないところを見ると、この先も機械制御サーモスタットはしばらく生き残れそうですね・・・(^_^)/
エンジンの冷却システムには、もう2つ、動くものがあります。
1つはクーリングファン。
ラジエーターの後ろについている扇風機の羽根です。
トラックなどでは、今でもエンジンのクランクシャフトからベルトを介してファンを回転させていますが、乗用車ではソートー昔から電動化されています。
特にFF車では、エンジンが横向きに置いてあるので、どう頑張ってもエンジンの回転でファンを回すことができないので、生まれながらに電動クーリングファンです。
もう1つがウォーターポンプ。
今でもほとんどのクルマのウォーターポンプは、エンジンからベルトを介して駆動されています。
が、電動化の波が押し寄せ始めました。
こちらは、トヨタ プリウスの2ZR-FXEエンジン。
ウォーターポンプにベルトがかかっていません。
こちらは、日産 ノート e-powerのHR2DEエンジン。
前回の油圧式パワステのオイルポンプと同様に、ベルト駆動のウォーターポンプも必要であるかどうかにかかわらず、エンジン回転数のみに依存して冷却水の流量が決定されます。
エンジンがチンチンに熱くなっても、アイドリング回転であれば流量は小さく、逆に冷却水温度がそんなに高くなくとも、エンジン回転数が高まれば流量は多くなってしまう。
電動ウォーターポンプであれば、水温センサーの信号からコントロールユニットが必要な冷却水流量を演算して、必要なだけポンプを回転させればいいので、無駄がなくなります。
無駄がなくなるとは、つまり燃費が良くなるのです。
ただし、ワタクシメからすると、この電動ウォーターポンプにも1点だけ欠点がございます。
それは、ウォーターポンプらしからぬ格好をしていること。
これは現行プリウスのウォーターポンプですが、初めて目にしたときには、これがウォーターポンプだと認識するまでに少々時間を要しました。
やっぱり、ウォーターポンプはこうあってほしいのですが・・・
現在のところ、この電動ウォーターポンプが採用されているのはハイブリッド車が中心のようです。
少なくとも電子制御サーモスタットよりは燃費に効きそうな気がするので、今後、ガソリン車にまで採用が広がっていくのではないかという気がします。
ナンでもカンでも電動化されていくのは、ノスタルジーオヤジのワタクシメとしては寂しい限りでありますが、少なくともサーモスタットだけは半電子制御で、半分は昔ながらの機械制御が残るようなので、ちょっとだけホッとしました。
訂正
2017/05/24
電子制御サーモスタットはBMWやフォルクスワーゲンでしか採用されていないようだ、と書きましたが、読者の方からご指摘をいただきました。
マツダ デミオのSkyactive-D 1.5エンジンにはサーモスタットの代わりにクーラント コントロール バルブという、電子制御モーターで開閉するバルブが採用されているそうです。
ご指摘いただきました読者の方、感謝を申し上げます。
また、間違った情報を公開いたしましたこと、お詫び申し上げます。
このマツダのクーラント コントロール バルブ、ワタクシメが想像していた電子制御サーモスタットとはちょっと違いました。
まずは、普通のサーモスタットで制御しているエンジン冷却系の概念図を見てください。
ワタクシメが想像していた電子制御サーモスタットは、図中のサーモスタットをエンジン冷却水温度や外気温、エンジン負荷等によって電子制御で開閉するモノでした。
続いて、マツダ Skyactive-D 1.5エンジンです。
ををを!
なるほどこれなら、系統別に冷却水の流量を調整することができるのですね。
冷却系統の高性能化と言えば、単純なワタクシメなどはエンジンの温度を下げる性能が優れているのだと考えてしまいます。
実際、BMWのMap controlled thermostatなどは、エンジン負荷が高まったときにさらに冷却水流量を増やしてエンジンを冷却、と言う使い方ですが、
でも。マツダの場合は違うようです。
1.5リットルの小排気量ディーゼルエンジンなので、エンジンが発生する熱量も大したことがない。
でも排ガス性能を考えると、チョットでも早く触媒を暖めなければならない。
そこで、始動直後のエンジンが冷めているときには、クーラント コントロール バルブ内のバルブを閉じ、シリンダーヘッド以外には冷却水を流さない。
そうすれば、冷却水は、シリンダーヘッド → クーラント コントロール バルブ → ウォーターポンプ → シリンダーヘッドのみを循環するだけなので、暖機を早めることができるというワケです。
ということで、このマツダのクーラント コントロール バルブは暖機を早めるための機能でした。
このご時世でも、サーモスタットだけはかろうじて機械制御が生き残れそうだと思っておりましたが、もし、マツダのシステムが流行ってしまったら・・・・
サーモスタットもウォーターポンプも、電子制御の魔の手の前で風前の灯です(T_T)
ただし、誤りをご指摘いただいた読者の方によると、フェールセーフのために機械式サーモスタットも残されているとのことです。
フーッ・・・首の皮一枚つながりました(^_^)/
【訂正文 終わり】
続く
|
TOPへ戻る