日産 ダイレクト アダプティブ ステアリング

- 第3回 ブレーキ バイ ワイヤ -

2014/08/04 公開

アクセルときたら次はブレーキとなるのは世の慣わしです(ホントカヨ?
ブレーキ バイ ワイヤとググってみますと、世界初の量産ブレーキ バイ ワイヤはトヨタ エスティマ ハイブリッドで2001年6月の事だそうです。
同年10月には、丸印に3本線のあのメーカーとボッシュのタッグで、SLクラスに、翌年にはEクラスに装備を始めたそうです。
ブレーキ バイ ワイヤの説明の前に、フツーの油圧式のブレーキの仕組みを見てみましょう。

ペダル踏む --> マスターシリンダーのピストンが押される --> マスターシリンダーのピストンがブレーキフルードを押す --> ブレーキフルードがブレーキキャリパーのピストンを押す --> ブレーキパッドが押されて、ブレーキローターを挟み込む --> クルマが止まる

まあ、メカ好きのオッサンには言うまでもないことですね。

そして下の図がブレーキ バイ ワイヤの概略図です。

最初の図と比べていただければ一目瞭然ですが、ブレーキペダルとブレーキキャリパーが機械的に接続されていません。
「踏む」と「離す」ボタンをクリックしていただければ、おおよその作動はご理解いただけるかと思います。
まさにコレ、ブレーキ バイ ワイヤですね。

もう少し、具体的にすると下の図になります。これはトヨタのECB(エレクトロリック コントロール ブレーキ システム)を簡略化した図です。

右上の「進む」ボタンをクリックすると、一通りの作動を見ることが出来ます。
マスターシリンダーとブレーキキャリパーが油圧でつながっているので、一見ブレーキ バイ ワイヤでないように見えますが、通常時はこの両者は切り離されているそうで、万が一の時のフェール・セーフとしてこの油圧は使われます。



このECB、トヨタではハイブリッド車に使われています。
トヨタ ハイブリッド システムのページでもご紹介いたしましたよう、ハイブリッド車では回生ブレーキで発電を行うので、回生ブレーキと油圧ブレーキを協調させなければなりません。
つまり、ブレーキペダルを踏んだ量と、油圧ブレーキが効く量が同じにならないような仕組みが必要なわけです。
どこまでがバイ ワイヤで、どこまでがそうではないのかが難しいトコロですが、世のハイブリッド車やEVは回生ブレーキのため、大なり小なりバイ ワイヤ的な仕組みを持っています。
たとえば、ホンダ フィットは仕組みこそ違えど、トヨタと似たような考え方です。
日産リーフでは、下の図のようにマスターシリンダーのピストンを電動で動かしています(あくまで概略です)。
brake5 これも回生ブレーキ作動中には、モーターがブレーキフルードの圧力を調整していますので、広い意味ではバイ ワイヤと言っていいかもしれません。



さて、前回のスロットル バイ ワイヤの回では、スロットル バイ ワイヤはオッサンにこう言いました。

ぜ~んぶ、アタシがしてあ・げ・る

と。
オッサンとしては、「余計なことしやがって!」と、否定的な態度を取らざるを得ないでしょう。
しかしながら、ハイブリッド車のブレーキ バイ ワイヤに関して言えば、手動というわけにも参りません。
アクセルペダルと、油圧ブレーキペダルと、回生ブレーキペダルの3つをならべて、減速時には右足で油圧ブレーキペダルを、左足で回生ブレーキペダルを操作して、両ブレーキを協調させてスムーズに減速・・・
なんてことになると、第1回目で登場したヒコーキの運転と同様にとても難しいものになってしまします。

ああ、もう身を任せてしまいましょう。
せっかく、「ぜ~んぶ、アタシがしてあ・げ・る」と言ってくれてるのです。
オッサンとしては、

瞳を閉じて、その胸に抱きすくめられてしまいましょう




ちょっと興味深い話を
メルセデス ベンツでは、このブレーキ バイ ワイヤのシステムをSBC(セントロニック ブレーキ コントロール)と呼んでいたそうです。
「呼んでいた」と過去形なのには訳があります。
SLとEクラスに搭載されたSBCに2004~2005年にかけて二度のリコールが発生。
一説には、ベンツの輸入元・ヤナセ始まって以来の大リコールであったとか・・・。
さらに一説によれば、この大リコール、メルセデス ベンツ社の経営まで揺さぶったとか・・・
いずれにしても相当な大騒ぎだったらしく、懲りたメルセデス ベンツ社は、Eクラスのマイナーチェンジで早々にこのSBCに見切りをつけてしまいました。

あの丸印に3本線のメーカーが諦めたことを、我が日本車が脈々と作り続けているとは、なんとも誇らしい話ではありませんか。



ここまで読んでいただいて、
ちょっと違うな
と思われたオッサンはいらっしゃいますでしょうか?
実はワタクシメもそうです。
ブレーキ バイ ワイヤと言ったら、やはり電動ブレーキを想像してしまします。
つまり下の図のような仕組みです。
brake1 もう開発は進んでいるんでしょうけれど、未だ市場には姿を現しません。
信頼性とか、故障時のバックアップとか、コストとか、いろいろムズカシイのでしょう。
ただ、いずれはこんなブレーキが登場するのでしょう。
ちなみに、一部高級車などでは、駐車ブレーキは電動になっていますよね。
駐車ブレーキを自動化したところで、ナニがいいんだか、オッサンのワタクシメにはサッパリわかりません。


続く

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