ミラーサイクル

- 第3回 バルブタイミング -

2014/10/10 公開

何事もタイミングが大事であることは、経験豊富なオッサンの皆さんはご承知のはずです。
きっと若かりし頃のオッサンには、想いを寄せる女性の一人や二人や三人や四人はいたはずです。
ワタクシメの場合、紗友莉チャン(仮称)でした。
この紗友莉チャン(仮称)、ワタクシメなどには高嶺の花的な存在でした。
おそらく、彼女が通常の状態や、あるいは彼氏が出来たばかりでラブラブの状態でしたら、ワタクシメなどがどんなに努力しても振り向いてくれることなどなかったでしょう。
しかしワタクシは機を窺いました。
紗友莉チャン(仮称)が失恋し、弱っているところを狙って慎重に距離を詰め、見事つき合うことに成功したのです。
まさに戦略的勝利(エヘン
まっ、もっともすぐにフラれましたが・・・トホホ
まあとにかく、タイミングが大事だという話です。

エンジンでもバルブを開いたり閉じたりするタイミングは大事です。
それ一つ変えることで、エンジンの特性がガラッと変わってしまうほどですから。


ご存知の通り、エンジン回転の1/2の速度で回転するカムシャフト上の偏心カムによってバルブリフターが押され、バルブが開きます。
また、バルブスプリングの反力によって閉じられます。

さあ、ここからが本題。
4サイクルエンジンは、
吸気 --> 圧縮 --> 燃焼 --> 排気
を繰り返しています。
理屈の上では、吸気バルブは吸気行程の間だけ開いていればよいのですが、実際は空気にもわずかな重さがあるため、止まっている空気は急には動きださず、動いている空気は急には止まれません。
座っているオッサンが立ち上がって動き出す時には

ヨッコイショ!

と掛け声をかけてますが、止まっている空気も動き出すには時間がかかります。

上のアニメーションの通り、吸気バルブは上死点より早く開き、下死点より遅く閉じます。
このバルブの開閉のタイミングがバルブタイミングです。
ただしこのバルブタイミング、一筋縄ではいきません。
たとえば下死点で閉じるタイミングですが、
エンジン回転数が高い時には空気は速く流れるので慣性が大きくなかなか止まりません。
ので、下死点後もしばらく吸気バルブを開いておきたい。
しかし、エンジン低回転時には空気の流れも遅いので慣性は小さく、下死点後に空気の流れはすぐに止まってしまします。
この時、もし吸気バルブが開いたままだと、せっかく吸い込んだ空気はピストンに押されて出て行ってしまいます。
マツダ SKYACTIV-Dの稿でも触れました、

コッチを立てればアチラが立たず

高回転で力のあるエンジンを目指すと、低回転がスカスカ。
低回転でトルクを出そうと思えば、高回転がヘロヘロ。
どこのメーカーのエンジニア氏も、その妥協点を探りつつエンジンを設計していたのです。

しかし、そこでホンダのエンジニア氏は考えた。

低回転用のカムと、高回転用のカム、2つとも付けちゃえ

quint それがかの有名なV-TECで、初登場は1989年、二代目ホンダ インテグラのB16A型エンジンです。
始めて乗った時、ちょっと感動しました。
たしかシビックSiRだったと記憶しております。
それまでシビックやCR-XのZC型エンジンだって素晴らしいものでしたが、
高速カムに切り替わった時の力強さと言ったら・・・もう四半世紀も前のことなので忘れてしましましたが、感動したことだけは覚えています・・・
CBR400F しかしそのV-TEC、じつは原型がありました。
V-TECから遡ること6年、1983年に登場したホンダ CBR400Fで、機構の名称はREVでした。
ただし、V-TECのように高速/低速カムの切換えではなく、低回転時には2バルブ、高回転時には4バルブに切り替える仕組みでしたが、機構的にはとても似ているものであったと記憶しております。
このCBR400F、わずか2年で市場から姿を消すのですが、開発者の方からこんなエピソードをお聞きしたことがあります。

「エライ人が空冷でやれっていうから、REV付けたり、いろいろやってナントか58馬力絞り出したんだけどさ・・・」

他社が水冷エンジンを採用する中、CBR400Fは空冷エンジンだったのです。
そして当時、そう高出力こそが正義であった時代、お上から申しつけられた自称・自主規制によって250ccエンジンは45馬力、400ccエンジンは59馬力、750ccエンジンは77馬力という上限があったのです。
しかし頑張ったCBR400Fでしたが、59馬力には届かなかった・・・

「でもさ、水冷にしたら簡単に60馬力以上出ちゃったから、すぐにヤメタんだよね、空冷エンジンもREVも・・・」



その後カムを切り替える様々な方式が各メーカーから発表されました。
下の図で原理だけを説明します。

オレンジ色が高速側のカム、水色が低速側のカム、中心にある青がカムシャフトです。
高速カムはカムシャフトに固定されておらず、低速時にはブラブラ遊んでいます。
高速時には、カムシャフトから棒が飛び出し、高速カム側の溝に嵌り、高速カムがカムシャフトと一体で回転します。

ただし、上の図は原理の話です。実際のエンジンでは、各メーカーがそれぞれ工夫を凝らした、ずっと複雑な機能なので・・・念のため

このバルブタイミング変更機能、もともとはハイパワー車のためのモノでした。
もちろん、今でもその用途で使われてもいますが、そうではない場合も多々あるのです。
ミラー・サイクルでも、燃費や効率のために、この機能を使っています。

世の中、ナニが役に立つかわかりません。

だから言ったでしょ、昔の女の電話番号捨てるなって

さて、次回はようやくミラー・サイクルです。

続く


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