ミラーサイクル
- 最終回 ミラーサイクルエンジンを載せたクルマたち -
2015/03/03 公開
マツダの販売店5チャンネル化をご記憶でしょうか。
バブル真っ盛りの頃の話です。
1988年、マツダ イノベーション計画の元、国内販売の強化を狙い、多販売チャンネル化を行いました。
マツダ店、アンフィニ店、ユーノス店、オートザム店、オートラマ店の5チャンネルです。
ちなみにその計画では、販売目標が100万台だったそうです。
残念ながら1988年のデーターを見つけることが出来なかったので、参考までに1993年のデーターを紹介すると、マツダの国内乗用車販売台数は271、585台。
どれだけマツダイノベーション計画が壮大なモノだったかがお分かりいただけるでしょう。
ただし、こういう大風呂敷は大概ウマくいきませんよね。
イヤ、ウマくいって急成長を遂げる会社もあるでしょうが、業界の底辺にいたワタクシメも、マツダの販売店に勤務していた知人も首を捻るくらいでしたから・・・
はっきり言って、ちょっと失笑しました。
バブル崩壊というマクロ経済も原因の一つでしょうが、計画はコテンパンに破綻しました。
その中でも、とくに笑っちゃうのがユーノス店でシトロエンを、オートザム店でランチアの販売を始めたことです。
マツダ車が売れないものだから、販売店の救済の意味があったのでしょうか?
当時の輸入車、とくにラテン系のクルマの品質がどの程度であったか、きっとマツダの偉い人は把握してなかったのでしょうね。
いったい、どのような過程で、多チャンネル化、輸入車の販売、計画のとん挫、撤退となったのか、知りたいものです。
どなたか、この経緯について書かれた回顧録のような書籍をご存知の方がいらっしゃいましたら、是非とも教えていただきたいところです。
ちなみに、当時国産メーカーの販売店が輸入車を扱った例がけっこうありましたよね。
マツダのシトロエン、ランチアの他にも、ホンダディーラーでクライスラー チェロキーやランドローバーを扱っていましたし、トヨタでクライスラー・ネオンを売っていました。
さらにスバルではオペルのミニバンを売っていました。
トヨタのネオンは政治的な理由であったようですが、ホンダとスバルは、自社の弱い部分を輸入車で補おうって安易な考えなんでしょうね。
当時の輸入車の品質がどれだけ低かったか、「偉い人にはわからんのです」と現場の人は嘆いたに違いありません。
閑話休題
そのマツダ、1993年にユーノス800を発売しました。もちろん、ユーノス店の専売でした。
1996年のマイナーチェンジで、車名をマツダ ユーノス800に変更。
1997年、ユーノス店の廃止で車名はマツダ ミレーニアへ再度変更。
どうでしょう、マツダ イノベーション計画の挫折を体現したようなクルマでした。
しかしこのユーノス800に搭載されたKJ-ZEM型エンジン、量産車初のミラーサイクルエンジンだったのです。
しかもスーパーチャージャーはリショルム式で、これも世界初。
ミラーサイクルの理想を体現したようなエンジンでした。
ただし、2000年のマイナーチェンジでミラーサイクルエンジンはカタログ落ち・・・・
次のミラーサイクルエンジンを搭載したのは1997年のトヨタ プリウス。
ただしスーパーチャージャーは付いていません。
その代り付けたのが電気モーター。
そう、ハイブリッドです。
エンジンをミラーサイクルにして、力が足りない部分をモーターで補ったのです。
現在では多くのハイブリッド車がミラーサイクルエンジンを採用しています。
そして次がまたマツダ。
2011年の3代目デミオのマイナーチェンジからです。
スーパーチャージャーは付いていませんが、圧縮比14:1で話題となりました。
スーパーチャージャーもモーターもついてないなら、パワー不足じゃないの?
と思われたオッサン、さすがです。
で、思い出してほしいのはV-TECです。
もちろんV-TECはホンダの呼び名で、マツダではSV-T。
吸気バルブも排気バルブも調整するので、デュアルSV-Tだそうです。
たとえば、空いた国道を40km/hくらいでトコトコと走っている。
この時は、パワーがなくたって困らないので、バルブタイミングを調整してミラーサイクルで。
高速道路の追い抜きでは、バルブタイミング調整でミラーサイクルやめる。
これでモード燃費23km/Lを達成しました。
追記
2016/06/01
最近の例で申し上げますと、新型アウディ A4のエンジンがミラーサイクルです。
ダウンサイジングターボ エンジン全盛の欧州車の中でアウディは一歩先行き、このエンジンはライトサイジング エンジンというコンセプトだそうです。
正しいサイズのエンジン・・・???
想像するに、ダウンサイジングターボの燃費を更に良くしたいからミラーサイクルにしてみた。
でも、いくらターボを付けたところでミラーサイクルでは力がないので、排気量を大きくしてみた・・・という考え方でしょうか。
ようやく日本メーカーからダウンサイジングターボ エンジンが現れはじめたというのに、
もう! アウディさんたら・・・セッカチね!
まッ、流行るかどうかわかりませんけどね、ライトサイジングターボ・・・
《追記ここまで》
最後に、ミラーサイクルとアトキンソンサイクルの違いについてです。
トヨタやホンダでは、ハイブリッド車に搭載されているエンジンをアトキンソンサイクルと説明しています。
まあ、間違ってはいないでしょうが、正確でもないようです。
アトキンソンサイクルとは、圧縮比 < 膨張比 を達成するため、複雑なリンクなどを使い、ピストンの上死点や下死点を変化させるものです。
一方のミラーサイクルは、アトキンソンの理論サイクルを複雑な機能を用いずに実現するために、吸排気バルブのタイミングを変化させたものです。
Wikipediaには、ミラーサイクルをこう説明しています。
アトキンソンサイクルのミラー手法
しかしこれもちょっと違います。
ミラーサイクルは過給してこそですので、正確には
アトキンソンサイクルの過給器を用いないミラー手法
となります。
そしてハイブリッド車に採用されているエンジンはといえば、
上死点と下死点は不変なのでアトキンソンサイクルではありません。
また、過給しているわけではないので純粋なミラーサイクルでもありません。
ので、無理やりまとめるなら、
アトキンソン理論サイクルの過給器を用いないミラー手法
となりましょうか・・・。なんだか、
天然の帆立貝柱と春キャベツのサラダ 仕立て 梅の香りを添えて
と同じに聞こえます・・・
完
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