最新ガソリンエンジン
- 第14回 燃料系 その6 -
2016/07/02 公開
「明日はタイフウイッカで、抜けるような秋空が広がるでしょう。」
天気予報でよく耳にするセリフです。
タウフウイッカ???
オバカであったワタクシメの貧相な変換能力は、耳から入った「タイフウイッカ」を台風一家と変換しました。
だって、一過なんて言葉、日常生活ではそうそう使わないじゃないですか。
台風の後には必ず晴天となり、それはまるで家族のように寄り添ってやってくるものだから台風一家。
そう信じていたのです。
ワタクシメの名誉のために付け加えますが、子供の頃の話ですヨ。
でも、結構オトナになるまでその認識が改められなかった・・・っていうのは口が裂けても言えません。
さらに恥を忍んで申し上げれば、駅前や住宅街で見かける「月極駐車場」。
日本中、どこへいってもあるではありませんか。
太平洋戦争敗戦後、GHQの指示によって三井、三菱、住友などの財閥は解体されたのですが、地下財閥である「ゲッキョク」財閥だけは解体を免れた。
とは言え、表の世界で堂々と活動するわけにもいかず、その潤沢な財力でもって日本中の土地を買いあさり、安定収入の見込める駐車場経営を行っている・・・恐るべし、ゲッキョク財閥!
とも夢想しておりました。
一体、台風一過と月極駐車場に、そしてEFIにナンの関連性があるのか・・・
クランクシャフトとカムシャフトの先っぽに取り付けられた歯車上のシグナルプレートの回転角度を検知するのが回転センサーで、エンジン回転速度や、クランクシャフト角度(各ピストンの位置)を判別するための信号を送ります。
形はこんな感じです。
位置はクランクシャフトとカムシャフトの先端です。
昔から使われているのは、点火系でも登場したピックアップコイル式のセンサーです。
この方式のセンサーにはMPU(Magnetic Pick Up)というカッコいい名前が付いているらしいので、ここではMPUで統一することとします。
銅線を巻きつけた鉄芯を磁石が作る磁場の中に置いて、鉄芯の傍を導体が通ると電気が発生します。
エンジンの回転センサーの場合、導体はクランクシャフトやカムシャフトに取り付けられた歯車状のシグナルプレートです。
歯車の一部が欠けているのがミソでして、クランクシャフトのシグナルプレートとカムシャフトのシグナルプレートに個別の歯欠けを設けることで、コントロールユニットは信号が来ないタイミングによってクランクシャフトの回転位置を特定することができます。
覚えていますか~? あったよね~、こんなの→
高校だったと思うのですが、フレミングの右手の法則です。
ワタクシメは、名前こそ覚えてはいましたが、内容はサッパリ忘却の彼方・・・右手の法則と左手の法則も区別がつきません。
で、復習しました。
人差し指が磁石が作る磁界の向きで、その磁界の中でシグナルプレートの歯が親指方向に動くと、中指方向に電気が流れる・・・と言うわけです。
記憶が定かではないのですが、20年くらい前のことでしょうか・・・
MPUセンサーに替わってホールセンサーが回転センサーに使われ始めました。
浅学なワタクシメは、「ホールセンサー」と聞くや刹那、ホール → 穴であると思い込みました。
きっとシグナルプレートの代わりに穴の開いたナニかがクランクシャフトやカムシャフトに取り付けられていて、穴の動きが磁束を変化させ、センサーがそれを検知するに違いない・・・と。
嗚呼、三つ子の魂百までも(涙
子供の頃の、台風一家とゲッキョク財閥の勘違いから何ら進歩することなく大人になってしまいました・・・トホホ
ホールセンサーに使用されているホール素子が「hole:穴」ではなく、この作用を発見した英人エドウィン・ホールさんの名前が由来であることを知ったのはダイブ時間がたってからでした・・・
さて、ホール効果とホールセンサーの原理です。
磁石が通り過ぎるとき(磁界が変化するとき)、ホール素子内の電子の動きが変化するのに注目してください。
磁界の変化に伴って電子が図中の上に向かって流れようとする力が発生します。
この変化を検知して磁界が変化したこと、つまり導体が横切ったこと、クランクシャフトセンサーで言えばシグナルプレートの歯がセンサーの前を横切ったと判断できるのです。
電子の流れの向きを変える力をローレンツ力と言うのですが、このローレンツ力は左手の法則で表すことができるそうです。
MPUセンサーが右手、ホールセンサーが左手・・・ちょっとオモシロイ話です。
ちなみに、実際のセンサーでは磁石が動くわけではなく、磁石が作った磁界の中を導体であるシグナルプレートの歯が横切ることで磁束を変化させています。
さらに最近ではMRセンサーも登場しました。
MRセンサーは磁気抵抗素子(MR素子)を利用しています。
磁気抵抗素子とは、磁束密度の大きさに応じて電気抵抗値が変化する素子です。
仕組みとしてはMPU式やホールセンサーと同様で、磁石が作る磁界の中でシグナルプレートの歯が移動するのを検知します。
3種類の回転センサーを紹介しましたが、ココで疑問。
なぜ、MPUセンサーはホールセンサーやMRセンサーに取って代わられたのでしょう?
スミマセン、偉そうに問いかけておきながら、ここからは推測です。
いつくかのエンジンでは、クランクシャフトセンサーにホールセンサーを、カムシャフトセンサーにMPUセンサーを使用しています。
クランクシャフトのシグナルプレートにはたくさんの歯が付いています。エンジン型式によりますが30~60個程度の歯が付いています。
対するカムシャフトのシグナルプレートには、少ないと2個の歯しか付いていません。
そのうえ、クランクシャフトはカムシャフトの2倍の速さで回転します。
ご存知の通り、現在では凄まじいほどの緻密な点火、燃料噴射制御を行っています。
スパークプラグは1回の燃焼行程中に4回も火花を飛ばますしし、ディーゼルエンジンなどではエンジン1回転中に7回も燃料噴射したりします。
こうなってくると、歯数が多くて回転も速いクランクシャフトの回転を検知するにはMPU式では能力不足になってきてしまったのではないでしょうか。
そう、MPUセンサーも、自らが殺したキャブやデスビ同様にホールセンサーやMRセンサーに殺されつつあるのです。
祇園精舎の鐘の声 盛者必衰の理をあらわす
ナンだか最近、ワタクシメは古くなって消えゆくものにとても哀愁を感じるようになりました。
おお、俺もそうだ!
と仰るオッサンがいらっしゃいましたら、ワタクシメと一緒に消えゆくMPUセンサーに哀悼の意を表しましょう。
前述の通り、MPUセンサーは右手の法則で、ホールセンサーは左手の法則で説明できることに触れました。
まずは右手をMPUセンサーを表す右手の法則の形に、左手を役割を受け継ぐホールセンサーを表す左手の法則の形にしてください。
そして立ち上がって両手を突出してから肘を90度に曲げます。
足を肩幅よりちょっと広めに開き、膝を曲げ腰を落とします。
そしておもむろにこう叫んでください。
ゲッツ!
以上、回転センサーのお話でした。
ちなみに、当分の間カムシャフトセンサーはMPUセンサーで済みそうなので、MPUセンサーはまだまだ現役で行けそうです・・・
続く
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