トヨタ ハイブリッド システム

- 最終回 ハイブリッドよドコへゆく -

2014/06/26 公開

私事ですが、毎年年末近くなると、都内某ホテルのレストランである会の集まりに参加します。
趣向を凝らしたバイキング形式と、一年ぶりのおしゃべりの楽しい時間を過ごします。
参加者は、皆さんオッサンです。
年々、おしゃべりの方はパワーアップしますが、バイキング形式の方は、どうもテーブル上に重ねられる空皿の枚数が減っています。
子供の頃、両親に連れて行ってもらった焼肉バイキングでは、子供心に「モトを取らねば!」と腹の皮が破れるくらい詰め込んだものですが、
もう、この歳になると、モトを取るもへったくれもありません。食べすぎると、翌朝に胃がもたれて仕方がないのです。



で、モトを取る話です。
日本では絶好調のハイブリッド車。
近い将来、「ハイブリッドでなければクルマでなし」なんて時代が来てしまうような勢いです。
ところが、欧州や米国、その他諸外国では、それほど芳しいものではないらしい。
一時期米国でも人気になったそうですが、最近はそれも下火。
原因は「モトが取れる?」だそうです。

ストップ アンド ゴーの多い日本の使用環境では、ハイブリッド車は回生ブレーキを活かしての強みが発揮しやすいのでしょうが、高速走行が多く、かつストップ アンド ゴーの少ない環境ではそうもいきません。
いや、日本でだって、単純に「モトを取る」だけを基準にすれば、ハイブリッドは絶対的優位とは言えません。
ちょっと調べてみました。

以下は、車名/価格/JC08モードの燃費です。

カローラアクシオ ハイブリッドG ¥2,134,285 33.0km/L
カローラアクシオ 1.5G ¥1,697,143 20.0km/L

フィット ハイブリッド Lパッケージ ¥1,882,286 33.6km/L
フィット 15X Lパッケージ ¥1,728,000 21.8km/L


同一車種、グレードを選んでみました。ただし、仔細な装備まで同じかまでは調べておりませんので、ご了承ください。
カローラの場合、ハイブリッド車とガソリン車の車両価格には437,142円の差が、フィットでは154,286円の差があります。
JC08モードの数値とガソリン1リットル160円で計算すると、モトを取るには、カローラで約140,000km、フィットで約60,000km走らなければなりません。

これを多いと取るか少ないと取るかは、オーナーの使用環境次第でしょうが、乗用車の年間平均走行距離が9,480km(790km/月:2010年 経産省の資料より)であることを考えると、
フィットで76ヶ月、カローラで177ヶ月乗らなければなりません。
ただし、この計算はあくまでイメージです。実燃費はJC08モード燃費とは異なりますし、使用状況によっても大きく異なります。

イエイエ、ワタクシメはハイブリッドを否定するつもりは毛頭ありません。
CO2の排出量という絶対的な正義が低燃費車にはあるのですから、それだけでも選ぶ理由に十分なりえます。
これはワタクシメの個人的な考えですが、今のハイブリッド車の人気は、環境問題に比較的敏感な日本人の気質と、ストップ アンド ゴーの多い使用環境によって支えられているように思えます。
裏を返せば、環境問題に無頓着で、ストップ アンド ゴーの少ない国では、ハイブリッド車が人気を勝ち得ることはないと言えるのかもしれません。
ちょっと、いわゆるガラパゴス化が心配になってしまします・・・



下の写真はJR(国鉄)の機関車で、左から蒸気機関車のD51、ディーゼル機関車のDD51、電気機関車のEF65です。

d51 dd51 ef65
路線によって状況は様々でしょうが、蒸気機関車はディーゼル機関車に、路線が電化されればディーゼル機関車は電気機関車に置き換えられました。
理由は効率。
蒸気機関車のエネルギー変換効率は10%程度しかありません。それに比べ、ディーゼル機関車は30%程度、電気機関車は80%もの効率を誇ります。(ただし電気は発電時の効率や送電ロスを考えるとディーゼルと大差ないそうですが)

鉄道会社が1万円分の石炭を買ってきて蒸気機関車で使うと、1000円分しか仕事をしてくれません。
一方、1万円分の石炭を自社の火力発電所で燃やして電気を作り、電気機関車を走らせると3000円分の仕事をしてくれます。
言い換えると、電気機関車は同じ給料で3倍働いてくれるわけです。

濛々と黒煙を噴き上げながら疾走する姿にも、非力ながらも急坂を懸命に登る姿にも、鉄道会社の偉い人は心を動かしてはくれません。
当然のごとく、1/3しか働かない蒸気機関車はリストラされることに・・・
SLファンが泣こうが叫ぼうが、希望退社を迫られる社員と同じように、蒸気機関車は姿を消しました。



機関車と違って、クルマの場合キーワードは「効率」ではなく「エコ」。
つまりどれだけCO2を出さないか。(まあ、広い意味で考えれば同じですが)
ガソリンエンジン車も、ハイブリッド車も、いずれ蒸気機関車のように消え去ってしまう運命なのでしょうか?
現在、日本ではハイブリッド、欧州はダウンサイジングエンジンが時代の流れとなっています。
片やガソリンエンジンの弱みを電気で補い、片やガソリンエンジン自体の効率改善を目指していますが、 どちらも、ガソリンエンジンの延命措置に過ぎないのでしょうか?



この稿を書いている最中、ニュースが飛び込んできました。 トップページの“オッサンが気になりそうな自動車ニュース”にもリンクを貼りましたが、トヨタが今年度中に燃料電池車を発売するそうです。

toyota_FCHV 10年ほど前、第一次燃料電池ブームとでも言いましょうか、トヨタとホンダが燃料電池車のリース販売を日米で行いました。
トヨタはクルーガーFCV、ホンダはFCXです。
さらにホンダは、2008年にもクラリティという車名で燃料電池車をリースしました。

ああ、未来がやって来た

と、ワタクシメは錯覚しました。
しかし2014年の今日、どこを探しても燃料電池車は見当たりません。
調べてみると、クルーガFCVーは日米で12台、クラリティは2010年時点、日米欧で200台だそうです。
しかも使用地域が水素ステーションから限られた距離となれば、そうそう見かける機会もないでしょう。

ところがこのワタクシメ、自慢じゃありませんが一度だけクルーガーFCVを見たことがあるのです!
場所は東京都港区の国道15号線で、陸送のトラックに積まれたクルーガーFCVでした。
イベントかナニかへの運送中か、あるいは故障して走れなくなったのか・・・
ですが、考えてみればそんなもの見ても自慢にはなりませんね・・・

で、話はトヨタが今年度中に発売するという燃料電池車です。
価格は700万円程度。現時点で水素ステーションは31か所。
購入成される方は、大枚をはたいて壮大な社会実験に参加する・・・と言うことですね。
10年後、これが第二次燃料電池ブームと呼ばれるようになってしまうのかどうか、それはトヨタの偉い人にも、経産省の偉い人にも、誰にもわかりません。

さてさて、ホニャララ電池ブームは続きます。
ルノー・日産連合は“空気アルミニウム電池”車を2017年に実用化することを目指しているそうです。(ホントカヨ?
ニュースの記事のよれば(これもトップページにリンクを貼りました)、燃料として水を補給するだけでよいと書いてありますが、開発元の会社のリンクを辿れば、

電池内のアルミニウムは放電した後に水酸化アルミニウムに変化するので、それを工場でリサイクルする

とあります。
つまり空気アルミニウム電池車では、水ステーションとアルミニウムステーションが必要ということに・・・・

いずれにしても、ホニャララ電池車の未来は万難千苦が待ち受けていそうです。



iza EVはどうなのでしょう?
EVのエネルギー変換効率は石炭の火力発電で約26%、最新鋭のLPG火力発電で約39%となるそうです。(石炭発電40%、LPG発電60%、送電ロスでが5%、クルマの充電が85%、運転が80%で計算)
最新のガソリンエンジンは、フィットの1.3Lエンジンが約37%。
もちろんこれは理論値でして、エンジンの場合は最も効率がいいところで37%ですから、加減速を繰り返す実際の運転時には10%程度だとも言われています。
ですからエネルギー効率だけで言えばEVが断然有利なのでしょうが、航続距離と充電時間を考えると用途が限られてしまいますよね。
それに、あまり大きな声では言えませんが、原発あってのEVだと思うのです。
正直なとこと電力会社としては、電気が足りなくなる昼間に充電するのではなく、原発の電気が余る夜間に充電して欲しかったのでしょう。
その昔、そんな理由で東京電力も一生懸命電気自動車の開発を行っていましたよね。

原発が動いてEV充電用の夜間電力料金が大幅に割り引かれ、バッテリーに革新的な進歩があって航続距離が大幅に伸びない限り、EVが主役になれる日は来ないような気がします。



さて、ではハイブリッドはドコへゆくのでしょう? ガソリンエンジッはドコへゆくのでしょう?

スミマセン、ワタクシメには全然わかりません

これまでオッサンは、幾つもの家電の主役が変わるのをまざまざと見せつけられてきました。
レコードやカセットテープがCDに置き換わったり、黒い電話機が携帯に取って代わられたり、デジカメが普及したり、10~20年もあればガラッと景色が変わってしまいます。
ここまで変化の速度が速いと、オッサンの歳でも立派な

時代の証言者

です。

クルマはどうなんでしょう?
我々オッサンが子供の頃、「石油はあと三十年しかもたない」とすっと言い続けられてきました。
ところが最近のシェール革命とかで、当分の間化石燃料が使えると言います。
そう考えると、もう20年やそこらはガソリンエンジン車が、ガソリンエンジンを使ったハイブリッド車が主役の座から引きずり降りされることは無いような気がします。
えっ、30年後はどうだって?
ああ、もういいです。その頃にはワタクシメもおジーチャンになっていて、免許証は返しているでしょうから・・・



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