トヨタ ハイブリッド システム

- 第1回 コロンブスのタマゴ -

2014/06/14 公開
2016/05/14 追記
prius

コロコロと転がるタマゴを立てるには、タマゴのお尻をチョンと割ってやればいいと示唆してくださったのは、かのコロンブスです。
彼がアメリカ大陸を発見したのは1492年。
で、初代のトヨタ プリウスが発売されたのが1997年。
505年もの時を隔てたこれらの出来事に、何か共通点があるのでしょうか?
この稿では、悠久の時の流れに隠された2つの出来事を結ぶ意外な秘密を紐解いていきます。

と言うのは、真っ赤なウソです。
そんな高尚な話題を、ワタクシメごときが語るわけには参りませんし、そもそも、プリウスの開発とアメリカ大陸発見の間に何らかの関係があるという話も聞いたことがありません。



tgv メカ好きオッサンには言うまでもないことでしょうが、ハイブリッドの語源はイノシシとブタを掛け合わせたイノブタを意味するヒュブリダ、つまり異なる2つのものを交配したもののコトだそうです。

クルマの場合のハイブリッドは、モーターとエンジンの2つの動力源を持つタイプが、一般的にそう呼ばれています。

ちなみに去年のことですが、プジョーとシトロエンを擁する仏・PSAグループが空気ハイブリッドを発表しました。プリウスの電気を圧縮空気に置き換えたと考えればいいのでしょう。
2016年には実用・市販化すると発表されましたが、果たして・・・・?

ワタクシメが輸入車の仕事をしているころ、本国(欧州)のエンジニアからフランス人を揶揄するこんなジョークを聞かされました。

TGV(フランスの新幹線)の開発中のことです。
さてTGVエンジニア氏は、来るべき営業運転開始に先立って、予想されるバードストライクに備え実際の鳥をフロントガラスに叩きつける実験を行いました。 ガラスはアメリカ製で、テストのための実験機械も貸してくれたそうです。
3・・・2・・・1、発射ッ!
大音響と共に、大砲のような実験機械から鳥がフロントガラス目がけて時速300km/hで撃ち出されました。
性能要求を満たした堅牢なフロントガラスは鳥を跳ね返し、びくともしない・・・はずでした。
ところが鳥はフロントガラスを撃ち破り、運転席後方の壁も貫通し、客室に飛び込みました。
エンジニア氏は激怒し、実験結果のレポートと共にガラスメーカーに強い苦情を送りました。
ガラスメーカーからの返答は以下の通り。

冷凍の鳥は使わないでください。

そりゃそうだ。カチンカチンに凍った鳥じゃ・・・
歴史的におフランスとは仲がよからぬ国の人の言うことなので、もちろん、実話かどうかは知る由もありません。
でもなんとなくわかりますよね・・・(笑
そんな人たちが作る空気ハイブリッドですから、果たして・・・



閑話休題
ここで問題です。
想像してみてください。
オッサンは、某自動車メーカーのエンジニアです。
オッサンエンジニアは上司にこう言われます。
「今度ね、我社でハイブリッドやるから、君が基本構成を考えてくれたまえ。」
考えた末、オッサンエンジニアは下のような提案をします。

「エンジン」ボタンをクリックして下さい。
エンジンで走行している状態です。クラッチAが接続され、エンジンの駆動力がタイヤに伝わります。

「モーター」ボタンをクリックして下さい。
クラッチAが切り離され、クラッチBが接続されることで、モーターの力がタイヤに伝わります。

「エンジン+モーター」ボタンをクリックして下さい。
クラッチA、B共に接続され、エンジンとモーターの合力がタイヤに伝わります。

最後に「回生ブレーキ」ボタンです。
アクセルを離した場合やブレーキをかけた場合、クラッチAを切り離しクラッチBを接続することでタイヤの回る力がモーターに伝わり、モーターは発電機として作用してバッテリーを充電します。



「悪くないじゃん!」
オッサンエンジニアは意気込んで上司に企画書を提出します。

さて・・・上司の反応は如何に・・・?
続きます。


続く


追記

2016/05/14

本稿の冒頭部分で触れました、2014年に発表されたプジョー、シトロエンの空気ハイブリッド。
2016年に実用化とのことでしたが、どうやらポシャってしまったようです。

詳しくはコチラのニュースサイトをご覧ください。

想像通りと言いますか、残念ながらと言いますか・・・このような結果になってしまいました。
ニュースによると、「中断ではなく縮小だ」なんて言っているそうですが、まあ、この技術が永遠に陽の目を見ることはないでしょう。

一体、どんな仕組みだったのでしょうか?
ちょっと想像してみました。


もちろん現在のクルマですから、いたるところが電子制御化されているとは思いますが、おおよそこんな感じの作動ではないでしょうか?

ただし、上記のニュースサイトで「ハイドロリック・モーターを必要とする」と書いてあるのが気になります。
ハイドロリック・モーターと言えば、油圧や水圧で作動するモーターのはずです。
空気ハイブリッドと言っているのに、油圧モーター・・・?
空気モーターならニューマチック(pneumatic)モーターが正解だと思うのですが、まあ、この手の記事に誤訳は付き物ですが・・・
上記の取り消し線部について、読者様よりご指摘をいただきまして、調べなおしてみました。
ワタクシメは仏語→英語の時点で誤訳が発生したと推測したのですが、PSAの仏語サイトに行ってみましたら、見事に「moteur-pompe hydraulique」(油圧モーター/ポンプ)と書いてありました。
しくじりました。
大変申し訳ありません。

しかしながら、ハイドロリック・モーターが正解だとすると、圧縮空気を動力とするときには、圧縮空気で空気用のモーターを回し、それが油圧モーターを回してタイヤに伝える。
圧縮空気を溜めるときにはタイヤからの駆動力で油圧ポンプを回し、それが空気ポンプを回す。
と言うことになります。
どうもそれは・・・あまり美しくないように思えます。
もはや部外者には、真実を知るすべは永遠にやってこないのでしょうが・・・やはり、気になります。
(赤字部 2016/5/16 加筆・修正)


いずれにしても、おフランスの方々が、どんなに意表を突いた仕組みを繰り出してくるのか楽しみにしていたのに、残念です。

しかし、この「楽しみにしていたのに、残念です」を額面通りに受け取ってもらっては困ります。

2cvt シトロエン・2CVというクルマをご存知でしょうか?
そう、ルパン三世・カリオストロの城で、クラリスが乗っていたアレです。
で、驚くべきことにこの2CV、発売開始の1949年から1962年までのモデルには車速感応式ワイパーが付いていたのです。
そう、スピードが遅いときにはワイパーはゆっくり動き、スピードが速くなればワイパーもせっせと動く。

信じられますか?

1949年と言えば、太平洋戦争が終わってまた4年ですよ!
きっとシトロエンのエンジニアは、車速感応式ワイパーのためだけにホイールのそばに車速センサーを取り付け、ワイパーコントロールユニットを真空管式のコンピューターで作り、 車速に応じてワイパーモーターの回転数を変化させていた・・・わけではありません。

なんとビックリこの2CV、ワイパーがスピードメーターケーブルで駆動されていたのです。
今と違って、昔はトランスミッションの出力シャフトに小さなギアを噛み合わせて、そこからワイヤーケーブルでスピードメーターまで回転を伝えていました。
そのワイヤーケーブルの回転でワイパーを作動させていたのです。
ですから正確には車速感応式ではなく、車速連動式となります。

でも、これを開発したエンジニアのドヤ顔が目に浮かぶではありませんか。

どうだ、見たか。
電気のモーターが不要だからコストも下がるし、 なんたってクルマのスピードに連動してワイパーが動くんだ!
こんな便利なモノはなかろう!

ただでさえ高い鼻がさらに高くなったのに違いありません。

でも、わかりますよね・・・
これじゃあ、ダメだって。

大雨の中、駐車していた2CVに乗り込む。
フロントガラスは滝のように水が流れている。前なんて見えやしません。
エンジンを掛けて、さあ発進だ。
ワイパースイッチ オ~ン・・・・アレ・・・?
ワイパースイッチ オ~ン・・・・・・・・・・・ (-_-)

これぞまさにフランス流合理主義
腹を抱えて笑うほどではないけれど、十分ニヤニヤできるくらいにはオモシロイ。
となれば、空気ハイブリッドも・・・
ナンと言っても、「空気ハイブリッド」という考え方だけで、すでにニヤニヤできるのですから・・・


ちなみに2CVの車速連動式ワイパー、1962年のマイナーチェンジで廃止されたそうです。

やっぱり分かってたんだ、これじゃダメだって・・・ 



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