トルクベクタリング
- 第5回 ABS -
2016/07/17 公開
ABSはアンチ ロック ブレーキ システムの略です。
要はロックしないブレーキです。
雨の日でも雪の日でもロックしないブレーキなんてすばらしい発明をして下さったのはドコのドチラ様でしょう・・・とググってみたものの、スミマセン、よく解りませんでした。
Wikiの日本語版では、「最初のABSは欧米の鉄道車両向けに採用された」とあるのですが、英語版では「フランスのヴォアザンという航空機メーカーが1927年に開発した」とあります。
右図はヴォアザン3という紅の豚感タップリのヒコーキで、第一次大戦中に爆撃機、または地上攻撃機として使用されたそうです。
ところがこのヴォアザン、第一次大戦終戦の1918年には航空機製造から手を引いて、自動車会社になったそうです。
でも、「ABSはヴォアザンが1927年に航空機用として開発」???
自動車メーカーが副業として航空機部品を製造していたということなのでしょうか・・・?
もう少し、ググりを続けてみます
航空機メーカー ヴォアザンの創始者、ガブリエル ヴォアザンは、第一次大戦後にアヴィオンズ ヴォアザン(Avions Voisin)という自動車メーカーを立ち上げた。
このアヴィオンズ ヴォアザン、1946年にシトロエンと合併し、姿を消したそうです。
話をABSに戻すと、いくつかのサイトにおいて、ABSの開発は「自動車、航空機エンジニアのガブリエル ヴォアザンが開発した」とあります。
ということは、ガブリエル ヴォアザンが立ち上げた自動車メーカーであるアヴィオンズ ヴォアザンが開発したわけではなく、ガブリエル ヴォアザンが個人として開発したということなのでしょうか・・・?
スミマセン・・・やっぱりよく分かりません。
まあとにかく、色々ググってみて分かったのは、
初期のABSはフライホイールを用いた純機械式であったこと、
クルマより先に航空機や鉄道車両に用いられたこと。
そして・・・そして・・・目を疑う記事を発見してしまいました。
1970年、フォード リンカーン・コンチネンタルがオプションとして、シュア トラック(Sure-track)という呼称でリアホイールのみのABSを採用。翌71年からは標準装備。
1971年、クライスラー インペリアルがシュア ブレーキ(Sure Brake)という呼称で4輪ABSを採用。
同年、GMがトラックマスター(Trackmaster)の呼称でリアホイールのみのABSをキャディラックの後輪駆動モデル、オールズモビル トロネードに採用。
同年、日産 プレジデントがEAL(Electro Anti-lock System)の呼称でリアホイールのみのABSを採用。
え~ッ ボッシュじゃないの~!!
ヤバイ・・・前回、堂々と世界初のABSは1978年のボッシュって書いちゃった・・・
どーしよう・・・
右図は1971年製クライスラー インペリアルのABSシステム図です。
ボッシュ以降のABSは、ブレーキにかかる油圧を調整するのですが、インペリアルのABSはブレーキブースターにかかる負圧を調整しているようです。
しかしその差こそあれ、各ホイールに回転センサーがあり、その信号をコントロールユニット(図中ではロジック コントローラー)に集め、コントロールユニットがブレーキ力を調整する指示を出す、というのは、まごうことなき3チャンネル・4センサーのABSです。
ちなみに3チャンネルというのは、右前輪、左前輪、左右後輪の3系統のブレーキ力を調整することで。4センサーとは各輪にそれぞれセンサーが設置されていることを表します。
この場合、各輪の回転速度は個別に検知してはいるものの、左右どちらかの後輪がロックした場合でも、左右後輪のブレーキ力は同時に制御されてしまうので、ロックしていない後輪までブレーキが弱められてしまいます。
現在のクルマではほとんど4チャンネル・4センサーになっていると思います。
話を「世界初」に戻しますと、ボッシュのホームページには確かに「世界初の乗用車用の四輪アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)」って書いてあるんですよ。
英語版にだって「ABS, the first electronic four-wheel antilock braking system for passenger cars」って書いてあります。
ン・・・?
ちょっとお待ちください・・・・
ボッシュのは、「Electronic four-wheel antilock braking system」
日産のは「Electro Anti-lock System」
「Electronic」と「Electro」の違いって・・・
辞書を引いてみました。
「Electronic」は、「電子の、電子工学の」などの意。
「Electro」は、「電気の、電気による」などの意。
オオ、ナントナク光が見えてきました。
つまり、1978年のボッシュ以前のABSは電動ABS、ボッシュ以降は電子制御ABS・・・
言い替えると、ボッシュ以前は「アナログ制御ABS]、ボッシュ以降は「デジタル制御ABS」・・・これでよろしいのでしょうか・・・?
真偽のほどは確認できないのですが、もう飽きたのでまとめます。
最初期のABSは航空機、鉄道車両用で純機械式。
自動車用ABSは1970年代初めに登場し、アナログ制御式。
1978年にボッシュがデジタル制御式を開発し、世界初の採用車はメルセデス・ベンツ Sクラス、日本車初は1982年の2代目ホンダ プレリュード。
「ABSを発明したのはダレソレで、自動車では世界初がベンツのナニナニで、日本初はナニナニ」で済まそうと企んでいたABSの歴史コーナーがトッテモ迂遠になってしまいましたが、これでようやく動画のクルマにもABSが付きました。
VIDEO
あーヨカッタ。
これで車道に飛び出したヒトを轢くこともなく、黒塗りメルセデス・ベンツ 560SELにオカマを掘ることもなくなりました。
続いてABSの仕組みです。
アニメーションをご覧になる前に、以下の点を予めご了承ください。
乗用車のブレーキ配管は、故障に備え2系統に分けられています。
多くの場合、前輪右と後輪左が1組、前輪左と後輪右が1組になっていて、どちらかに不具合が生じてもバランスよく止まれるように工夫されています。
下のアニメーションは、まず2系統ある配管のうち、1系統だけを表しています。
さらに、本来では右前輪と左後輪など、2個あるはずのブレーキを1個に割愛してあります。
このようなロック→回転→ロックの制御を1秒間に何度も繰り返すことで、ABSは雪の日でもヒトをはねてしまったり、黒塗りのメルセデス・ベンツ560SELにオカマをほってしまうことを防いでくれているのです。
しかしながらこのABSも、路面状況によってはかえって制動距離が伸びてしまうなど、決して万能なわけではありません。
なので、ABSが付いていようがいまいが、スピードは控えめ、安全運転をお願いいたします。
続く
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