その昔、ジムカーナに参加したことがあります。
ご存知の方も多いかと思いますが、ジムカーナとは駐車場のようなだだっ広い場所にパイロンを並べてコースを設定し、パイロンに当たらないようにせせこましく曲がりくねる競技です。
「参加したことがあります」と遠慮がちな書き方から類推できる通り、ワタクシメ、ソート―へたくそな部類でございました。
そして腕が未熟な分、口は達者になるものです。
「7本目のパイロンでアンダーが出ちゃってさ、あそこでコンマ3秒はロスしたな・・・」
なんてことを口走ったりします。
この玄人っぽいセリフ、ジムカーナ未経験者や、数少ないワタクシメより下手くそなドライバーには受け入れられましたが、上級者の耳にでも入ろうものなら一喝されます。
「あのサー、ワタクシメ君。アンダーが出てるんじゃないんだよね、君が出してるんだよ!」
・・・グゥの音も出ません。
ここでいう「アンダー」とは、もちろんアンダーステアのことで、ハンドルを切っても思ったようにクルマが曲がってくれない状態を指します。
たとえば、若かりしワタクシメが所有していた二代目ホンダ CR-X(EF7型)。
このクルマ、FFにも関わらずお尻が軽いことで名を馳せていました。
ある雨の日、ワタクシメは仕事で港へ向かっていました。
朝一番に接岸する船の荷物を確認するためです。
ご存知のオッサンもいらっしゃるかとは思いますが、埋め立てされた港湾地区の道路は碁盤の目状で、どこも直角カーブ。しかも片側二車線の道路も少なくありません。
「オラッチの船はどこかな~」
と、ちょっとだけ寝坊して遅れてしまったワタクシメは、焼きそばパンを頬張りながら、キョロキョロとお目当ての船を捜しつつ港の中を走り回っていました。
「あっ、あった!」
と船を見つけたのは、とある直角カーブを曲がっている最中でした。
後になって冷静に考えてみれば、「あっ、あった!」と同時に、反射的にアクセルを緩めてしまったのですね。
その瞬間、後輪はグリップを失ってツツツーと流れ出しました。
イエね、言い訳をお許しいただけるのであれば、ワタクシメも下手くそなりにジムカーナとかやっておりましたから、真剣に、集中して、ハンドルを10時10分の位置で握ってさえいれば、対処できたのですよ・・・タブン
ところがこの時は、左手に焼きそばパン、体はシートバックから浮かしてフロントガラスから覗き込むように巨大な自動車運搬船を見上げていて・・・
となれば、CR-Xの唐突なリアの滑り出し対処できるはずもなく・・・
・・・まァ、下手くそだったのです・・・(涙
大きな声では言えませんが、一般道、ジムカーナ場問わずスピンした経験は数知れず。
オーバーステアでさらに有名だったのは二代目MR-2(SW20型)の初期型です。
ワタクシメ、初代MR-2(AW11型)と二代目の初期型以降のハンドルを握る機会はあったのですが、残念ながらと言うか、幸いにもと言うか、このスーパーテールハッピーの二代目初期型には乗ったことがありません。
その後輪の暴れぶりを某自動車雑誌曰く
「ランチャがストラトスでコレをやるとスーパーハンドリングと絶賛されて、トヨタがやると『危険だ』と評価されるのは何故か?」
そして別の自動車雑誌が、このコメントに対してまるで返歌のように
「ランチャは意図してこうした。トヨタは意図しないのにこうなちゃった。」