マツダ SKYACTIV-D (SH-VPTR型エンジン)
- 第7回 ターボを付けてみた -
2014/05/31 公開
2016/05/28 改稿
古今東西、パワーを上げようと思ったらターボです。
1979年、430型 ニッサン セドリック/グロリアに搭載されて以来、ありとあらゆる高性能車にターボが取り付けられてきました。
トヨタの1G-GTEU型エンジンや日産のRB26DETT型エンジンの、ターボを意味する「T」の文字がどれだけ誇らしげに見えたことでしょう。
しかしそれも今は昔。平成12年排出ガス規制の影響を受けて、当時、日本の道路からターボ車が全滅しました。
しかし、それも今は昔。技術が進んで、最近では欧州車を中心にターボエンジンも増えてきました。
そこで当時の若かりしオッサンのごとくマツダのエンジニア氏は考えた。
パワーが足りないのだから・・・
そうだ、ターボを付けようッ!
と言うのは、たぶんウソです。
ガソリンエンジンに比べ、ディーゼルエンジンはターボとの相性が良く、今ではターボなしのディーゼルエンジンは皆無です。
だからマツダ SKYACTIV-Dも企画段階からターボ付であったはずですから、パワー不足を感じてターボを追加したわけではないはずです。
しかし、このエンジンのターボの使い方は他のエンジンのターボと少々異なります。
前回までのお話の通り、マツダ SKYACTIV-Dは低圧縮比で薄い燃料なので、そのままではパワー(トルク)が出ない。
じゃあ、燃料をいっぱい噴けばいいじゃん。
と、言うことになります。
しかし燃料をたくさん噴くと、空燃比が濃くなり煤煙が発生してしまいます。
ならば、ターボでたくさんの空気を押し込めば、燃料をたくさん噴いても、空燃比は薄いまま。
パワーは出るし、煤煙も少ないまま。
メデタシ、メデタシ。
ちなみに、前述の1G-GTEUやRB26DETTは小型のターボを並列に並べたツインターボでしたが、最近のディーゼルエンジンではVGターボとシーケンシャル(多段過給式)ターボが主流です。
ツインターボは、低回転でもターボが効くように小型ターボを並列に配置しています。
VGターボはバリアブル・ジオメトリー・ターボの略で、ターボに流れ込む排気ガス通路の面積を変化させて、低速から高速まで効率よくターボを聞かせます。
シーケンシャルターボは、小型と大型のターボを直列に配置して、低速では小型を、高速では大型ターボを効かせます。
マツダ SKYACTIV-Dの2.2リットル版・SH-VPTR型エンジンではシーケンシャルターボを、1.5リットル版・S5-DPTS型ではVGターボを採用しています。
ちなみに、BMWのN57S型エンジンには、2つのVGターボと1つの大型ターボのトリプルターボ仕様もあるそうです。さすが御大臣!
さて、これまでマツダ SKYACTIV-Dのお話をしてきましたが、最後に今ディーゼルエンジンの今後について考えてみます。
まずはディーゼル先進地域の新車販売の占有率です。
とりあえず、英仏独伊西の5か国のデーターを探してきました。
グラフの始まる1991年から、どの国でもディーゼルエンジン車がグイグイ伸びてきているのがわかります。
ですがピークは2011年か2012年あたりで、そこからは概ね横這いか、緩やかな下りになっています。
例の排ガス不正事件の後、フォルクスワーゲンはディーゼルからプラグインハイブリッド車や電気自動車に重点を置くと発表しましたし、
また、新たな燃費規制で各メーカーがプラグインハイブリッド車に力を入れているので、ディーゼル車は減ることはあってもこれ以上増えることはなさそうです。
とは言っても、もう十分すぎるほどディーゼルエンジンは普及していますけどね。
翻って、わが日本国ではどうでしょう。
2006年に黒船としてやってきたメルセデス・ベンツ E320 CDIを迎え撃つために立ち上がった攘夷志士・マツダ SKYACTIV-Dではありましたが、その後フォロアーが全く現れません。
孤軍奮闘のマツダ SKYACTIV-Dを尻目に、黒船軍団はとどまることを知りません。
メルセデス・ベンツはC、Eクラスに、BMWは1、2、3、5シリーズに、ボルボはV40、60に、MINIだって多くのグレードに、ジャガーはXE、XFに、などなど。
それに対して日本勢は・・・
三菱はあんなことがあったばかりですし、プラグインハイブリッドに力を入れているようですから今更新しいディーゼルエンジンなんて出しそうもない。
スバルが欧州でディーゼルエンジンを発売してからもう8年になるにもかかわらず国内投入は見送られていますから、今後も期待薄でしょう。
ホンダは、そもそも国内にディーゼルエンジンを投入したことがありませんし、ハイブリッド中心になることでしょう。
日産は、国内投入したとしてもルノー製エンジンの可能性が高いのではないでしょうか。
トヨタはナンと言っても世界一のハイブリッド車メーカーですから、わざわざディーゼルエンジンを投入するとも思えない。
となると、少なくとも日本国内ではマツダの孤軍奮闘が続きそうです。
ガンバレ、マツダ!
あっ・・・今、軽いデジャブーが・・・
10年とか20年とか昔、同じことを言っていたような気がします・・・
ガンバレ、ローターリーエンジンのマツダ!
ビミョ-です・・・
完
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