マツダ SKYACTIV-D (SH-VPTR型エンジン)
- 第1回 ディーゼルエンジンとガソリンエンジン -
2014/05/31 公開
2016/05/28 改稿
マツダ SKYACTIV-D こと、SH-VPTR型エンジンは2012年、CX-5に搭載されてデビューしました。
当時、自動車雑誌等でもかなり話題になりましたが、一体なにがそんなにスゴイのでしょう?
ディーゼルエンジンと言えば、昔を知るオッサン読者諸兄にとっては、ウルサイ、遅い、臭い、キタナイ、などなど、ネガティブな想い出があることでしょう。
でも低速トルクは滅法つよくて、一世を風靡したヨンクといえばディーゼルエンジンでした。
三菱はパジェロ、トヨタはランドクルーザーにハイラックスサーフ、日産はサファリにテラノ。
懐かしくなってググってみれば、初代バジェロのデビューは1982年。
そこからブームは大きく広がりました。
オッサンの皆様方は、ホリチョイムービー3部作をご記憶でしょうか?
1987年には「私をスキーに連れてって」
1989年に「彼女が水着にきがえたら」
そして1991年に「波の数だけ抱きしめて」
当時若者であったワタクシメも、やれスキーだ、やれダイビングだと、まんまとこれらの映画にノセられたものです。
苗場も安比も、大瀬崎も土肥も、ワクワクしながらスキー板やダイビング機材を積み込んだのはハイラックスサーフやテラノでした。(今、思えば、バブルでしたなァ~)
もちろんエンジンはディーゼル。
たしかV6 3,000CC ガソリンエンジンを積んだグレードもあったはずですが、若かりしワタクシメの周りにそんなリッチパーソンはいませんでした。
軽油は安いし、燃費もイイし低回転のトルクもあるから運転も楽(あくまでガソリンエンジンと比べてです。サーフもテラノも重かったのですから・・・)となれば、少々ウルサイのも遅いのもクサイのも我慢できたものです。
それにヨンクだけではありません。
トヨタ クラウンや日産 セドリックなどの大きなクルマから、カローラやサニー、マイナーなところでもいすゞ ジェミニ、ダイハツ シャレード、マツダ ファミリアなどの小型車にも、ディーゼル搭載グレードがあったものです。
が、平成12年のある日に東京都の偉いオッサンが発した一言で、ディーゼルエンジンは絶滅に追いやられます。
ワタクシメの記憶が正しければ、それ以降、日本のディーゼル乗用車は文字通り全滅しました。
一台も残らず、です。
そう、少なくとも表面上は、国産メーカーは開発をやめてしまったのです。
しかしその間、欧州ではディーゼルエンジンの進化は留まることを知りませんでした。
もともと燃費がよく、CO2排出量が少ないうえに、「ウルサイ・クサイ・遅い・汚い」が改善されれば、これはもう選ばない手はないのです。
ウソかホントか確かめようもないのですが、ソ連が崩壊して冷戦が終決し、NATO軍の戦車が使用していた大量の軽油がダブついたため、なんて陰謀論的な話も聞いたことがあります。
でとにかく、国産メーカーが開発をお休みしている間に欧州メーカーのディーゼルエンジンはドンドン良くなり、欧州全体でみれば、販売される乗用車の半数ほどがディーゼルエンジン搭載車となったのです。
嗚呼、彼我の差はユーラシア大陸ほども大きくなったのです。
ディーゼル鎖国していた我が国に、2006年、太平の眠りを覚ます上喜撰がやってきたのは太平洋の対岸ではなく、ユーラシア大陸の向こう側からでした。
そしてペリーの蒸気船は黒い煙を濛々と上げていたはずですが、クリーンディーゼル搭載 メルセデス・ベンツ E320 CDIのマフラーからは黒煙がちっとも出ていませんでした。
メルセデス・ベンツに触発されたか、2008年、日産がエクストレイルにディーゼルエンジン搭載車を追加しました。
しかしエンジンは、ルノー製M9R。またしても心臓部は黒船でした。
さらに同年、スバルが水平対向ディーゼルエンジンを発表しましたが、発売は海外のみ。
「国内への投入も検討する」といった記事を読んだ記憶もあるのですが、結局実現せず。
ようやく攘夷のサムライが立ち上がったのが2012年のマツダ SH-VPTR型エンジンと言うわけです。
しかしながらと言いますか、2016年5月時点では、立ち上がったのはマツダだけで、他国産メーカーは二の足を踏んでいる状態です。
このエンジン、最後発だけあって、ちょっと色々スゴイらしいです。
ナニがスゴイのか、これから解き明かします。
まずは、ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの違いです。
もちろん、メカ好きのオッサンにそれは釈迦に説法でしょう。ですが、とりあえず、おさらいです。
大きな違いを箇条書きで
- ガソリンエンジンの燃料はガソリン、ディーゼルエンジンの燃料は軽油
- ガソリンエンジンは空気とガソリンを混ぜてから燃焼室に送って、スパークプラグに火花を飛ばして燃やす。ディーゼルエンジンでは燃焼室に直接軽油を噴射して燃やす。
- ガソリンエンジンではスロットルバルブで空気の量を調整して燃焼室に送る。ディーゼルエンジンはスロットルバルブを持たず、いつでも全力で空気を吸い込む。
ガソリンエンジンの場合、1kgのガソリンが完全に燃えるのに14.7kgの空気が必要で、この14.7:1を理論空燃比と呼ぶのだそうです。
前述の通り、ガソリンエンジではスロットルバルブで絞られた必要な量の空気と、その1/14.7の燃料をシリンダーに入れる前に噴射して混ぜるので、理想に近い比率の混合気が燃えるわけです。
一方、ディーゼルエンジンはスロットルバルブがないので、アイドリングから最高回転まで、全力でシリンダーに空気を吸い込みます。
そこにちょこっとだけ軽油を噴射して燃やすので、混合比はメチャクチャ薄いことになります。
さらに、噴射したそばから燃え出すので、一生懸命混ぜようとはしているのですが、ガソリンエンジンと比べると、燃料と空気はよく混ざっていない状態で燃えるのです。
ということで、覚えておいていただきたいのは次の2点。
- ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べ超薄い燃料で動いている。
- ディーゼルエンジンでは、燃料は空気とよく混ざり合っていない状態で燃える。
次回から、マツダ SKYACTIV-Dがどうやってクサイ、ウルサイ、遅い、キタナイを克服したかに迫ります。
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続く
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