最新ガソリンエンジン

- 第4回 点火系 その3 -

2015/09/18 公開

disb ワタクシメにとって、エンジンルームの中で最もメカニカ~ル感を感じた部品の一つがディストロビューター、略してデスビでした。
他にはないブッ太い配線を一身に集めたその姿は、独特のオーラを放っていたものです。
1985年に、日産 スカイラインに搭載されたRB20エンジンが登場するまではすべてのエンジンにコレがついていたので、見覚えのあるオッサン方々もいらっしゃるかと思います。

ワタクシメ、久しぶりにデスビの写真を見てまず思ったのが、右図の赤線で囲った金色のプレートについてです。
コレがナンと言う名前であったのかは記憶がありませんが、デスビの左右に1か所ずつあって、画面左側の黒いキャップをデスビ本体にパチン、パチンと引っ掛けて固定するためのプレートです。
パチン、パチンですから、簡単に取り付けられますので、
イマ風に言えば、クイックリリース・デスビキャップとなるのでしょうが、デスビキャップをクイックにリリースしなきゃならない理由は見当たりません。
それに、簡単に取り付けられるということは、逆に言えば、簡単にとれ・・・・

このキャップの中では数万ボルトの高圧電気が、1分間に数千回も猛烈な勢いで火花を飛ばしている阿鼻叫喚の地獄絵図なのです。
当然、水分、油分、ほこり厳禁で、実際デスビキャップと本体の間にはゴムのシールが入っています。
なのに、固定はちょっとバネになったプレート二枚だけ・・・。

コンナンでイイんでしょうか?

イヤ、ダメだったと思います、多分・・・
実際、年代ははっきりしませんが、途中からこのパチンパチン方式は廃止されて、フツーにボルト留めされるように変わったので・・・。

パチンパチンがずれたらエンジンは止まってしまうので、今の基準で言えば絶対にあり得ない固定方法ですが、昔はこれでイイとは言わなくとも、ソノ・・・ナンと言うか・・・アレだったのですね・・・
まあ、なんとも牧歌的と申しますか・・・
イヤ、このへんでヤメテおきましょう。
今の基準で昔を語っても生産的ではありませんよね。



前回までは、単気筒エンジンに点火する方法をお話ししてまいりましたが、今回はもうちょっと現実的に4気筒のお話をいたします。
とは言え、基本的には単気筒も4気筒も変わりません
まずはエンジン2回転につき2万ボルトの電圧を4回作る方法です。
これはごく簡単に、コンタクトブレーカーを断続するカムの山を1個から4個に増やすだけです。
つまり、こんな感じ↓
cam で、作動はこう↓です。



簡単ですね。
これでイグニッションコイルは、エンジン2回転で高電圧を4回作り出せます。
6気筒エンジンならカム山を6に、12気筒エンジンならカム山を12にすればよいわけです。



続いて、作り出した高電圧を4本のスパークプラグに分配する方法です。
ここでようやくデスビの登場です。
まずは構造。



続いて作動です



アニメーションを動かしてしまうと少々解りづらいのですが、イグニッションコイルからの12ボルトをデスビ内のコンタクトブレーカーで断続し、それによってイグニッションコイルで発生した高電圧がデスビの中央に入り、デスビローターを介して各プラグコードへ配分されます。
当然のコトですが、コンタクトブレーカーが切断されるタイミングと、デスビローターが金属棒の位置にあるタイミングは合っていなければなりません。

ココで皆さんに是非記憶していただきたいのは、デスビの多才ぶりです。
一段目で進角、遅角制御を行い、二段目で一次電流の断続を行い、三段目で各プラグへの配電を行う。
一人三役のマルチプレーヤーなのです。
ホラ、なんだかアナタもデスビが好きになってきたでしょ?

大好きなデスビでありますが、気を付けなければならないのはプラグコードを取り付ける位置です。
一般的な4気筒の場合、点火順序は1-3-4-2ですから、デスビローターの回転方向順に、1番、3番、4番、2番シリンダーの順でプラグコードを挿さなければエンジンはかかりません。
6気筒なら、1-5-3-6-2-4が一般的です。
まあワタクシメも、このあたりまでなら諳んじて言うことができます。
が、12気筒となると・・・もう駄目です。
1-7-5-11-3-9-6-12-2-8-4-10なんて、とてもとても、覚えきれるもんではありません。

disb_cap ちなみに、12気筒のデスビキャップはこんな感じになります。
もはやギリシャ神話の怪物、メドゥサのようです。
あの、髪の毛の代わりに頭からヘビが生えてるやつです。
そしてこのデスビを分解したが最後、組み付け時にはメドゥサに睨まれた村人のようにワタクシメは石になるのでした・・・。



60年代や70年代のクルマはこうしてスパークプラグに火花を飛ばしていたのでした。
今のクルマのような緻密な制御は望むべくもありませんが、これまでお話ししてきたような仕組みで一応は過不足なくクルマは動きました。

そしてここから、怒涛の電子制御化が始まります。
想像するに、それはこんな1本の苦情電話から始まります。

トゥルルル、トゥルルル、ガチャ
「はい、こちら○○自動車、お客さま相談室でございます。」
「ああ、おたくのクルマ乗ってるんだけどさァ・・・」


一体、お客さまからはどんな苦情が・・・
続きます。

続く


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