最新ガソリンエンジン
- 序章 -
2015/08/17 公開
日本のクルマにとって、1989年はエポックメイキングな年でありました。
トヨタからはセルシオが、日産からはR32 スカイラインGTRが登場し、ホンダはNSXを発表(発売開始は翌年)しました。
セルシオは世界最高の静粛性、GTRはそれまでに類のない電子制御化された4WDや4WS、NSXのエンジンも世界最高のV6と評されました。
この前後、80年代の半ばから90年代初頭まで、F1ではホンダ エンジンが圧倒的な強さを見せていました。
ル・マンでは1991年にはマツダが優勝し、惜しくも優勝こそ逃して2位にとどまりましたが、1994年にはトヨタが残り1時間少々のところまでトップを走っていました。
世界ラリー選手権・WRCでも、1993年から1999年までのマニュファクチャーズ部門の優勝メーカーを並べると、トヨタ、トヨタ、スバル、スバル、スバル、三菱、トヨタとなります。
1987年にモデルチェンジした6代目 トヨタ カローラでは、1.5L以上のエンジンすべてに、それまでスポーツカー用とされていたDOHCエンジンをハイメカツインカムの名称で搭載しました。
世界初の量産DOHCエンジンです。
1989年、ホンダ インテグラには4輪車用としては世界初の可変バルブタイミング・リフトのVTECが搭載されました。
1991年、トヨタ レビン、トレノに4輪量産車初の5バルブエンジンが搭載されました。
1996年には、三菱が量産車世界初のガソリン直噴エンジン GDIエンジンをギャランに搭載しました。
追い越した、とは言いませんが、少なくともずっと前を走っていた欧州車の尻尾をつかみ、並ぶくらいまでグググッと引き寄せたくらいには思えました。
このまま「世界最高」、「世界初」が続けば、遠くない将来には日本車が・・・と想像するなと言う方が無理があります。
しかし、失われた20年がやってきました。
目尻や額に日々深くなる皺を刻み込んできたオッサン方々に、この間に舐めた苦杯のお話をする必要はないでしょう。
停滞している日本を尻目に、欧州ではディーゼルエンジンが全盛を迎えました。
乗用車のおよそ半数がディーゼルエンジンとなるほどです。
もちろん、昔ながらのガラガラゴロゴロのディーゼルエンジンではありません。
良いから売れる。売れるからお金をかけて開発できる。さらに良くなる。良いから売れる。
の循環で、あっという間に日本のディーゼルエンジンは遥か彼方に置き去りにされてしまいました。
ようやく、最近になってマツダのディーゼルが一矢を報いましたが・・・
ガソリンエンジンも同様です。
三菱のGDIを筆頭に、シリンダー内にガソリンを噴射し、低燃費がウリの直噴式エンジンがブームとなり、各メーカーからこぞって搭載車が発売されましたが、
いつの間にか全滅・・・。
ターボエンジンも平成12年排出ガス規制をクリアできず、次々を姿を消しました。
その後、目立った「世界初」や「世界最高」は登場しませんでした。
その一方、欧州では大きな流れが生まれました。
ダウンサイジングターボです。
先鞭をつけたのがフォルクスワーゲン。
2005年、ゴルフにスーパーチャージャーとターボを併設した1.4Lエンジンを搭載しました。
さらに2007年にはスーパーチャージャーを廃してターボのみにした1.4Lエンジンを採用。
これが現在、世を謳歌するダウンサイジングターボのハシリです。
それまでの自然吸気2.0Lエンジンを、ターボを付けた小排気量エンジンに置き換えたのです。
目的は低燃費。
遅れること7年。
日本でもレクサス NXに2.0Lのダウンサイジングターボエンジンがようやく採用されました。
2014年には日産 スカイラインにも2.0Lターボエンジンが採用されますが、これはベンツ製。
2015年、ホンダがステップワゴンに1.5Lターボエンジンを搭載しました。
ワタクシメの知る限りのお話ですが、レクサスも日産も、あまり「ダウンサイジングターボ」という言葉を積極的に使わなかったように見受けられます。
特にスカイラインなどでは、あまり専門的ではない雑誌やWEBの記事などにはR33以来のターボ復活などと書かれていました。
ターボはターボでも、その意味合いが全く異なるのですが・・・。
日本では「ダウン」という言葉が消費者にネガティブな印象を与えるとでも考えたのでしょう。
ところがホンダは、ステップワゴンのテレビCMでダウンサイジングターボを謳い始めました。
嗚呼、ようやく日本にもダウンサイジングターボの夜明けがやってきたゼヨ。
と、喜んだのもつかの間、
最近、アウディが「ライトサイジング」という言葉を使い始めました。
ライトサイジング:Right sizing・・・適正なサイズという意味でしょうか?
このライトサイジング コンセプトの2.0Lターボエンジンは、低負荷時にはダウンサイジングターボ並みの高効率、高負荷時には大排気量エンジン並みの出力を誇る、と主張します。
あ~あ、ようやくディーゼルではマツダが、ダウンサイジングターボではトヨタやホンダが欧州車と同じ土俵に乗れたかなと喜んだのも束の間、今度はライトサイジングだってさ!
温故知新
さて、クサってばかりいても仕方がありません。最新ガソリンエンジンです。
そんなタイトルだからって、「最新のアウディ ライトサイジングコンセプトの2.0TFSIはこんなんです。」と説明しても面白みがありません。
最新までに至った経緯を知らねば、最新のありがたみがありません。
そこで本章では、点火系や燃料系、ターボ、吸排気系などの項目に分けて、ワタクシメの四半世紀(以上?)にわたる記憶を総動員し、過去から現在に至る技術的な変遷をお話ししていこうという野心的な試みを行いたいと考えております。
(そんな大風呂敷広げて、最後まで続くのか、オレ・・・)
乞うご期待!
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i-Tasuは教育機関向けなので、このサイトを覗いていただいている読者方々の大部分にはあまり関係がないかと思いますが、
「ふーン、こんなのもあるんだァ」
くらいに思っていただけると幸いであります。
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続く
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