ハイブリッド車のまとめ

- 第5回 日産のハイブリッド その2 -

2017/01/19 公開

e-Power

まずは言わせてください。

おめでとう日産! 30年ぶりに月間登録台数1位奪還!!

nissan8 自販連の統計によれば、2016年11月の登録台数は、ノートが15,787台、プリウスが13,333台。
見事、日産が1奪還です!
このニュースを聞いて何より驚いたのが、過去30年間、日産は月間登録台数1位になれていなかったということです。
国内市場ではずーっと、ずーっと低迷が続いていたのは周知のとおりですが、まさか30年ぶりとは・・・

ネット上で
「11月の統計結果が出たころに札幌ナンバーのノートのレンタカーが首都圏某所の中古車販売店のストックヤードに結構な台数が置いてあったのを目撃した見つけた」
という記事を見つけました。

つまり、登録台数を伸ばすために、無理して相当台数をレンタカーとして登録した、というわけですが、
でも、そんなのOKです。
今日日、似たようなことはどのメーカだってやっているでしょう。

例えば、トヨタ アクアの標準グレード車のJC08燃費、37.0km/Lを何とか上回ろうともくろんだ37.2km/Lのノートの燃費スペシャルモデルにはパワーウインドウどころかエアコンすら付いていませんが、そんなことだってきっとOKです。

今日日、似たようなことはどこのメーカーだってやっています。
その証拠に、プリウスの燃費スペシャルモデルはちゃっかり燃料タンクが小さくなっています。
ただ、エアコン無しはやりすぎ・・・

しかしとにかく、登録台数もJC08燃費も1位にならなければならないのです!
経験豊かなオッサンの皆様は、1位と2位の間に、どれだけ大きな壁があるかはご存じのはずです。
いいえ、実力の差の話ではありません。
扱いの差です。
実力の差がほんの僅かでも、1位は賞賛をうけ、褒め称えられ、そして2位は忘れらます。
なので、首位奪還の千載一遇の好機を生かすため、日産レンタカーがどんなに嫌がろうと、エアコン無しを罵倒されようがが、とにかく1位を取るしかなかったのです。


nissan9 ちなみに30年前の1位は、6代目に当たるB12型、トラッドサニーだそうです。
カッコ良かったですよね、トラッドサニー。
とくに前期型。
後期型はちょっと丸みを帯びてしまいましたからね。
今になって思えば、B12型サニー、430型セドリック/グロリア、U11型ブルーバード・・・あの頃がカクカクデザインの終焉期であったのですなァ・・・(遠い目
好きだったのに・・・カクカクグルマ・・・
では、月間販売台数1位とJC08モード燃費クラス1位を無理クリ(?)獲得したノートのe-Powerのシステムを見てみましょう。


作動原理は簡単ですね。
いわゆるシリーズ式ハイブリッドで、エンジンは発電機用としてのみ使用され、一切駆動力を発生しません。

さて、ここからは少々言葉遊びです。
日産ノートe-Powerは、はたしてEVなのか?

EVは「Electric vehicle」の略ですから、直訳すれば「電気自動車」です。
リーフe-Powerはナニを動力としているかと言えば電気モーターですから、そういう意味ではリーフe-PowerはEVです。
ですから、日産が主張する「電気自動車の新しいカタチ」も間違っているとは言えません

その一方、ナニを動力源としているかと言えば、ガソリンです。
ガソリンスタンドでガソリンを入れ、HCやCO、NOX、そしてCO2を排出します。
そういう意味ではリーフe-Powerはガソリン車です。

なので厳密に言えば、リーフe-Powerはレンジエクステンダー付EV車、またはシリーズ式ハイブリッド車というのが正解であると思います。
しかしながら、レンジエクステンダー付きとはいえEVというのには少々無理があります。
とういのも、バッテリー容量がとても小さいのです。
ちょっと他車と比べてみましょう。

 ノートe-Power   リーフ   プリウス   アクア   フィットハイブリッド    アコードハイブリッド  
1.5kWh 24kWh   1.31kWh   0.94kWh  0.86kWh 1.3kWh

なるほど、同車格のアクアやフィットハイブリッドよりずっと大き、上の車格のプリウスやアコードハイブリッドよりも少々大きな容量なので、ハイブリッド車としては立派なバッテリーを積んでいると言えます。
しかし純EV車のリーフと比べると、わずか6%の容量しかありません。
単純計算できないのを無理やり単純計算してしまうと、リーフが24kWhのバッテリーでJC08モードでの航続距離が280kmなので、ノートe-Powerは17.5kmしか走れません。
なので、レンジエクステンダー付と注釈をつけたところで、やはりEVと呼ぶには無理があります。

お客様相談室に、そんなイチャモンをつけるオッサンがいるに違いないと予想した日産のサイトを覗いてみると、なるほどノートe-Powerを単に電気自動車とは呼んでいません。
リーフは「電気自動車(100%電気自動車)」、ノートe-Powerは「電気自動車(e-Power)」と注釈つきです。

「電気自動車」って言い切りたいんだけど・・・言えないないよなァ~

という、日産のマーケッティングのヒトの葛藤が見え隠れします。

じゃあ、シリーズハイブリッドでいいじゃない!
と言えば、そうもいかない。
すでにハイブリッドは巷にあふれているし、シリーズだとかパラレルだとか、そんな違いでは一般消費者には訴求できない。

そこで日産マーケッティングのヒトは考えた。

そうだ! e-Powerだ!!

ノートのテレビCMで、エーちゃんが「これは発明だ」とおっしゃっていますが、
厳密にe-Powerは日産の発明ではありません。
ディーゼル・エレクトリック式と呼ばれる、エンジンで発電機を回し、その電気でモーターを回して進むというのは、鉄道の機関車や潜水艦などの船舶ではたくさん使われていました。
けれども、「e-Power」という言葉は発明ですね。

やったね! ニッサン

ただし、新語を発明と言っていいのかどうかは知りません・・・



HR12 ノートe-PowerのエンジンはHR12DE。
e-Poweerではないフツーのノートと同じエンジン型式ですが、専用チューンです。
その昔、エンジンには多いと3本ものファンベルトが付いていました。
ファンとはラジエーターに風を送る扇風機の羽根みたいなもので、オー昔はエンジンのクランクシャフトからゴム製のベルトを介してこれを回していたので、そう呼ばれています。
ただし、70~80年代には、乗用車ではファンは電気モーターで回していたので、実際にはファンベルトではありませんが、流れでこう呼ばれていました。
ファンは回していませんでしたが、冷却水用のウォーターポンプ、パワステポンプ、エアコンのコンプレッサー、オルタネーターなどを回すため、複数のファンベルトが使われていたのです。
こんなカンジです ↓

belt1

この頃は、上図の右上にあるようなV字状の断面をしたVベルトが使われていました。
記憶が定かではないのですが、おそらく80年代後半から90年代にかけて、幅が広く溝を持ったサーペンタインベルトに取って代わられました。
このサーペンタインベルト、ベルトの背中側でもプーリーを回すことができるので、補機類がたくさんあっても1本のベルトで済むようになりました。
こんなカンジです ↓

belt2

さらに時代が流れ00年代に入ると燃費競争が厳しくなり、「いらないモノは回したくない」となりました。
いらないモノとは、まっすぐ走っているときのパワステポンプです。
ハンドルの操舵力をアシストするために油圧が欲しいのは、当然ハンドルを切っているときです。
でも、エンジンがかかっている以上、ハンドルを切ろうが切るまいが、パワステポンプは常に油圧をつくっています。
これはもったいない、ということで電動パワステが普及したわけです。
これで、パワステポンプを回すベルトは不要となりました。

ハイブリッド車が登場すると、ハイブリッドの形式にもよりますが、大きな立派な発電機を持っているので、オルタネーターも不要となります。

で、残ったウォーターポンプとエアコンのコンプレッサーを電動化してしまえば、もうベルトはいらない・・・となり、HR12DEエンジンにはプーリーもベルトもありません。


とある峠道の駐車場で、一台のクルマがボンネットを開いたまま止まっている。
車種はアルファロメオ スパイダー(もちろん旧型です)か、MGミゼットがよろし。
クルマの横には困った表情の美女。

「どうしました、お嬢さん?」
オッサンは、湧き上がる下心を必死に抑えてジェントルマンを気取ります。

「オーバーヒートしちゃって・・・」
人気のない峠の駐車場。
美女は少々の警戒心と共に答えます。

ドレドレ・・・とオッサンがエンジンルームを覗きこむと、ウォーターポンプのベルトが切れてなくなっています。

オッサンはチラリと美女の足元を一瞥して言います。
「じゃあ、ストッキング脱いで」

美女の表情は恐怖に・・・イヤ、アルファのスパイダーとかミゼットに乗ってる自己主張の強い女ならビンタが飛んできますね。

「イヤ・・・そうじゃなくて・・・」
オッサンは赤くはれた左頬をさすりながら事情を説明します。

納得した美女は、恥ずかしいからと、ちょっと離れたところでストッキングを脱ぎます。
オッサンは、見ぬふりをしながら全力の横目でそれを眺めます。

手渡されたストッキングをVベルトの代わりにクランクプーリーとウオーターポンププーリーの間に張れば、アラ不思議。
とても高回転までは回せませんが、とりあえずの代用として峠を下るくらいは何とかなります。

助けてくれたお礼と、誤解して殴ってしまったお詫びにと、美女は麓にある洒落たレストランの名前を口にします。


切れたVベルトの代わりにストッキング、とか、セブンスターの内装の銀紙が切れた菅ヒューズの代用となる、とかそんな話を聞いたことがあります。
本当に役に立つのかどうか、試したことはありません。

ですが、こんな妄想を抱いたことがあるオッサンがいらっしゃいましたら、謹んで忠告させていただきます。

峠の駐車場で、ボンネットを開けたままのノートe-Powerがとまっていても、ストッキングは脱がせられないからね!




閑話休題

全補機類の電動化を成し遂げたHR12DEエンジンですが、このエンジン、不遇のエンジンです。

読者オッサン諸兄のなかで、車検証をマジマジとみられたことがある方は、どのくらいいらっしゃいましょうか?
車検証には、原動機の型式という欄があり、エンジンの型式が記載されています。
昔の86ならば、「4AG」、昔のスカイラインなら「RB20」と記載されていました。

現在のハイブリッド車では、エンジンとモーターの型式が記載されています。
プリウスならば「1NZ - 3CM」。
エンジンとモーター、というワケです。
見たことはありませんが、2馬力ほどしかないモーターのS-HYBRID・セレナだって、「MR20 - SM24」と記載されているそうです。
となれば、モーターしか積んでいないリーフの原動機の型式欄には当然モーター型式である「EM57」と記載されているわけです。
ちなみにリーフの車検証の「燃料の種類」欄には、「電気」と記載されています。

このようにエンジンを搭載していれば、原動機型式とは法律上でのエンジン型式のことに他なりません。
ところがです。
ノートe-Powerに搭載されたHR12DEは、誰がどう見てもガソリンエンジンなのですが、車検証の「原動機の型式」欄にはモーターの「EM57」と記載されてしまうのです。

「エンジンなのに・・・まごうことなき直列3気筒DOHCガソリンエンジンなのに・・・

原動機ではない

そんなHR12DE、ちょっと不憫です。


しかし、かわいそうなエンジンを積んだe-Powerシステムですが、ワタクシメはコレにスゴイ可能性を感じています。
もはや、エンジンは駆動力を発生する原動機ではないので、タイヤと物理的につながっている必要がないのです。
言い換えれば、スペースさえあればクルマのドコに置いたっていい。
床下だろうが、天井裏だろうが、センターコンソールの中であろうが、入るのであれば入れちゃえばいいのです。

となれば、これまでと全く異なったパッケージングのクルマが出来上がるわけです。
もちろん、常識はずれのクルマを思いつくのは天才とか奇才とか呼ばれる人々で、ワタクシメのような凡人には何ら思いつきません。
でも、常識の範囲なら想像できます。

ノートより少し大きなエンジンを、バルクヘッドギリギリまで寄せて後ろに積みます。
何も縦に置く必要はありません、横にして寝かせれば、縦よりもさらに車体中心に近づけられますし、重心は低くなる。
で、リアシートの下あたりに150馬力くらいのモーターを載せて、その直後にデフ。
バッテリーはセンタートンネルに収めちゃえば、ほーら、マツダ ロードスターもビックリな軽快ハンドリングマシンの出来上がりです。
さらに、普段はノートe-Powerのようにエンジンの効率のイイところだけ使って、Sportモードスイッチを押したらエンジンとモーターの回転数の上下を同期させちゃう。
これでアクセルペダルを床まで踏み込めば「フォォォォォ~ン」と排気音がして、アクセルペダルを戻せば「シュカコワァァァ~」と吸気音が聞こえるわけです。
ををを、なかなか楽しそうなクルマじゃありませんか!

でも無理です。

日産自動車ですから、そんなクルマは作りません・・・

まあ、イイじゃないですか。
運転して楽しいクルマは作らなくたって、ノートは月間登録台数は1位だし、JC08モード燃費だったクラス1位なのですから!
もう一度、自販連のサイトを確認してみましょう。
2016年11月です。
日産ノート、15,784台。トヨタプリウス、13,333台。

ホラ、堂々の1位です。

では12月。
日産ノート、12,403台。トヨタプリウス、12.776台。

ア、アレ・・・?

続く

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