ハイブリッド車のまとめ

- 第8回 トヨタ マルチステージハイブリッド -

2017/05/12 公開

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♪こ~の道~は いつか来たみ~ち
♪あ~あ そうだね~
♪ほォら アカシア~ァの 花が咲いて~る

どこで聴いた歌だっけな?
と、ググってみたら、作詞:北原白秋、作曲:山田耕筰とのことでしたので、小学校の音楽室ですね。
レクサス LC500hに採用されたマルチステージハイブリッドの説明が童謡で始まるのには、もちろん訳があります。

この記事でいう「この道」とは、ステップ式ATです。
その昔、もう30年も前のことでしょうか。
自動車の仕組み教科書のATのページにはこのように書いてありました↓

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トルコンってなんじゃ?
プラネタリーギアって旨いのか?
という方はコチラを参照してください。


速度をトルクに変換できるトルクコンバーター(以下トルコン)が“主”変速機、当時は2~3速が中心でしたが、プラネタリーギアによる変速部が“副”変速機となっていたのです。
それがいつの間にか、プラネタリーギア部は変速部、トルコンはそのままトルクコンバーター(トルク増幅装置)と説明されるようになりました。

そう、トルコンは主役の座を奪われたのです。

それでも、トルコンは相変わらず重要な一構成要素であり続けました。
2000年代頃からでしょうか、欧州車を中心に、ダルな加減速感を嫌ってトルコンをトルク増幅装置として使うのではなく、単なるスターティングディバイスとして使う傾向が強くなりました。
スターティングディバイスとは、信号待ちのようにエンジンがかかったままDレンジで停止している場合にエンジン回転を吸収する装置です。
で、その究極的な姿が下図です。
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これはメルセデスベンツの一部の車種で採用された、トルコンの替わりに油圧多板クラッチを用いたシステムです。
スターティングデバイスですから、エンジン動力の断続が出来て、かつスムーズに接続できればいいので、トルコンの必要はないわけです。

ステップ式ATでは、トルコンは、主変速機 → トルク増幅装置 → スターティングデバイス → 多板クラッチに置き換え、と身をやつしたのです。
ただし、多板クラッチに置き換えられたのはメルセデスベンツの極々一部の車種のみで、スターティングデバイスとしての意味合いが大きな車種も増えてはいますが、未だにトルク増幅装置として使用している車種も多く存在しています。



マルチステージハイブリッド

lc500_2 2017年3月にデビューしたレクサス LC500hに採用されたマルチステージハイブリッドを極々簡単に説明してしまえば、THSⅡ + 4速ATです。

構図の概略図です↓


THSの動力分割機構が「電気CVT」なんて呼ばれているように無段階変速機なのに、さらにそこに4速ATを加えたのですが、言い方を変えれば、レクサスGSなどに採用されていた2速変速機付 THSⅡの4速版です。
2速までなら、納得ができるのです。
今や、ベルト・チェーン式のCVTにだって2段副変速機付CVTなんてのもありますから、レシオカバレッジを広げるためにも2段の副変速機付は納得できます。
だけど、無段変速機が付いているのにもかかわらず、さらに4段変速機・・・
なんだかよく分かりません・・・・。

まッ、でもいいか!

1000CCエンジンより1100CCエンジンの方がエラいのです
250馬力より280馬力の方がエラいのです
4気筒より6気筒の方がエラいのです。
リッター30kmより、リッター32kmの方がエラいのです。

となれば、2段副変速機より、4段副変速機の方がエラいにきまっています!



ちょっと安心したことがあります。
下のグラフはトヨタ発表のグラフをなぞったものですが、どうやらこの無段階変速機 + 4ATには疑似10速の演出をするモードがあるらしいのです。
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信号が青に変わってアクセルペダルをガバッと踏み込むと、1速から10速までMT(またはステップAT、DCT)のようにタコメーターの針が行ったり来たりしてくれるらしいのです。
上のグラフはおそらく全負荷時(アクセル全開時)の制御で、8速でリミッターの効く260km/hに到達しちゃうのだと思われます。
アクセルを全開にしなければ、もっと低い車速で次々と変速するはずです。
ただし、ゴールド免許のオッサンがETCのゲートを抜けて気持ち良く加速しても、100km/hでは10速まで入らないと思いますが・・・

で、ナニが安心したかと言えば、
ハイブリッドばかり作っているイメージのトヨタですが、
実はみんな

フオォォォ~ン、フオォォォ~ン、フオォォォ~ン
って、シフトアップが大好きなんじゃん(^_^)/

まあ、かなり以前からベルト・チェーン式CVTにも疑似6速とか7速の演出がありましたからね・・・。



前述の「数が多い方がエラい」理論に照らし合わせますと、マルチステージハイブリッドも4速より6速、6速より8速、8速より10速の方がエラいわけです。
ハイブリッドではないLC500は10速ATを搭載しているのですから、これをハイブリッドに使わない手はない。
10速もあれば、無段変速機であるTHSのキモ・動力分割機構だっていらなくなる。
あれッ・・・?
どこかで聞いたハナシだぞ。

そう、冒頭で歌った「この道」のトルコンです。
当初は主役であったトルコンが、最終的には(一部車種ですが)舞台を降りることになった。

初代プリウスでは、動力分割機構は主役というより、独り舞台でした。
3代目でリダクション機構付きTHSⅡとなり、動力分割機構は主役ではあるものの、リダクション機構という脇役が登場しました。
2速変速機付 THSⅡでは、ただの減速機であった脇役が変速機となり、ちょっとだけスポットライトを浴び始めました。
そしてマルチステージハイブリッドでは、その存在感がだいぶ大きくなりました。
もう、脇役なしでは舞台は成立しません。

ここからは「もし」のハナシです。
副変速機が4段では納まらず、6速、8速と増えていけば、もう無段変速機の存在価値がなくなってしまいます。
そうであるのなら、動力分割機構は廃止して、油圧多板クラッチをエンジンとATの間に配置すれば・・・
そう、動力分割機構は、ステップATのトルコンと全く同じ道を歩むことになってしまいます。


さらにまだオチがあります。
エンジン + クラッチ + モーター + ATとなると・・・


嗚呼、コレと同じになってしまう・・・・
そう、日産のFR用インテリジェント デュアルクラッチ コントロールです。


もう一段、オチがあります。
この「ハイブリッド車のまとめ」の序章では、「様々な搭載位置、搭載数のバリエーションが存在したジェット旅客機のエンジンが、今では両翼下に1基ずつの双発機にほぼ収斂しつつある」ということについて書きました。
新しい技術では、様々なバリエーションが試されるものの、最終的には時代の要求に適合したモノのみが生き残るという好例です。
と考えると、いまでは百花繚乱のハイブリッドシステムではありますが、いずれ少数のタイプに収斂していくのではないでしょうか。
それが、本命トヨタのTHSではなく、当時はさほどハイブリッドにやる気を感じられなかった日産のインテリジェント デュアルクラッチ コントロールとなったら、ソレはソレで相当おもしろいな、と感じる次第です。


(新しいハイブリッドシステムが登場したら)

続く

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