ハイブリッド車のまとめ
- 第3回 ホンダのハイブリッド -
2016/09/14 公開
2016/09/18 改訂
2018/06/04 改訂
右の画像は、今年に発売開始したホンダ クラリティ フューエル セルです。
燃料電池車の本格量販車としては、トヨタ ミライに続く2車種目になります。
このデザインを見てハタと思い出したのが下の画像、1999年に登場した初代ホンダ インサイトです。
両者の間には17年もの歳月の開きがありますが、リアフェンダーがタイヤを覆うスパッツ状になっている点が共通しています。
このスパッツ、理由は空力です。
リアタイヤとホイールハウスが乱す空気の流れを少しでも減らそうとするもので、もっと突き詰めれば燃費向上が目的です。。
個人的には、このリヤタイヤのスパッツ・・・ちょーカッコ悪い。
コチラの画像は、1988年のル・マン24時間耐久レースで、407km/hという最高速を記録したWM セカテバ プジョー P88です。
当時のセカテバ プジョー、レースの結果より最高速を出すことが目的だ、と揶揄されたくらい最高速にかけていました。
まあ、407km/hも出るのに本戦は47位ですから、そういわれても仕方ありません。
そのP88もスパッツ付。
最高速が目的ですから、最も重要なのは空力。
となれば、性能優先でカッコなんて二の次のレーシングカーですからスパッツ付も仕方がありませんが、決してカッコのいいものではありません。
ミニスカートの女性が魅力的に見えるのは脚を出しているからで、となれば脚(タイヤ)を隠したクルマは・・・
話をホンダに戻します。
最新の環境性能を備えたホンダ クラリティ フューエル セルのデザイナーが、17年前の最新環境性能のインサイトのデザインにインスパイアされた、もしくはリスペクトしてスパッツを付けた。
それともインサイトのことなど知らない若いデザイナーが、純粋に空力とカッコよさのバランスを取ってスパッツを付けたのか。
前者なら素敵な話です。
が、ソーも言っていられない。
もう2枚、画像を見てください。
上のが2009年登場の2代目インサイト。
下のが2006年のFCXクラリティ。
2台のインサイトと2台のクラリティを年代順に並べると
初代インサイト
2代目インサイト
FCXクラリティ
クラリティ フューエル セル
となります。これをスパッツの有無でみると
スパッツ有り
スパッツ無し
スパッツ無し
スパッツ有り
これはイケません。
カッコ悪くても続けることが、伝統を、ブランドを作るのです。
あるいは、カッコ悪いから止める、と一度決めたら、もうやってはいけないのです。
ブランド力のある日本車と言えば、スカイラインが5本指に入っていたことを疑うオッサンはいらっしゃらないでしょう。
ボディサイドのサーフィンラインはS54、C10、C110、C210と4代続きました。
丸型4灯のテール・ブレーキランプはC110、R30、R31、R32、R33、R34と6代続きました。
ホ~ラ、続けることがブランド力でしょ!
でもそのスカイラインもブレ始めます。
運動性能を重視してホイールベースを短くしたR32(2,615mm)。
ところが、市場からはこんな声が・・・
「後ろの席、狭いんだよね~」
スカイラインだから買う、という大切なお客さまです。
ナントかしなきゃならない。
「新しいR33スカイラインでは、ホイールベースを伸ばし後席の居住性を改善しましたァ!」(2,720mm)
するとまたお客さまが
「あ~あ、R32のハンドリングは良かったな~あ」
「分かりました。では新型R34スカイラインではホイールベースを短くして運動性能を改善しましょう!」(2,665mm)
ドーよ、コレ?
まあ、当事者ではないので真偽のほどは分かりませんが、結構有名な話です。(都市伝説カモ?)
それにV35型では、「新しいスカイラインを創造する」とかで6代続いた丸型テールランプを捨て去ります。
もうこの頃はセダンが売れなくなっていましたから、新しい価値のクルマを創りたかったのでしょうね。それは分かります。
でもお客さま曰く
「このお尻はスカイラインじゃねーな・・・」
V35型スカイライン、マイナーチェンジで丸型4灯風テールランプを復活させます。
もう、ブレブレ。
如何に芯を貫き通すかが難しいことを示唆する出来事です。
1999年9月から販売された初代ホンダ インサイトに採用されたハイブリッドシステムはIMAと呼ばれました。
プリウスが1997年12月の販売開始ですから、2年近く遅れての登場となります。
当時の10.15モード燃費ではプリウス初期型が28.0km/L、インサイトが35km.0/Lであったので、量産ガソリン車では世界最高でした。
とはいえ、インサイトは二人乗りのうえ、タイヤも燃費スペシャル。
Wikiによれば、初期型インサイトのタイヤ空気圧は240kPa。昔風に言えば約2.4kg/㎝2。
比較までにトヨタ カローラ レビン(AE86型)は1.8kg/㎝2。
如何に高い空気圧であったかが分かります。もちろん、走行抵抗を減らし、燃費を稼ぐためです。
要は、実用性はさて置き、「とりあえずは世界最高の燃費を出すべ」と言った具合のスペシャルモデルであったのです。
ちなみに35.0km/Lはマニュアルミッション車での数値で、CVT車では32.0km/Lであったそうです。
このIMA、基本的な考え方が違うとはいえプリウスに比べて非常に簡素なシステムでした。
あのコロンブスの卵的な発想の動力分割機構をもったプリウスの2年後に、こんなシステムを世に出すなんて、よく恥ずかしくないな~、と驚いた記憶があります。
いえネ、ホンダの名誉のために申し上げておきますが、今ではすっかりブランドイメージが薄くなってしまったホンダではありますが、1999年と言えばまだNSXは生産していましたし、S2000が発売されたのも1999年です。
6代目EK型シビックにはTypeRがありましたし、2000年のアコードにはユーロRがありました。
まだまだ、ミニバンメーカーになってしまうなんて想像もできない頃です。
そのホンダが、こんなシステムを・・・
では、その簡単な仕組みを見てみましょう。
ネ、簡単でしょう?
エンジンとトランスミッションの間にモーターを付けただけ。
上のアニメーションはCVT仕様ですが、MT車ではモーターから下流にクラッチとマニュアルトランスミッションがあるだけ。
モーターの出力も、プリウスの350N・mに対して49N・m。
そうです。この非力なモーターでは、モーターだけでクルマを動かすことができません。
ですので、インサイトはパラレル方式のマイルド ハイブリッドと言うことになります。
まあ、実験的な要素の強いクルマだったということですね。
当然、販売も振るわなかったようで、2006年に生産終了となり、2009年に2代目が登場するまで持ちませんでした。
IMAは、シビック ハイブリッドやCR-Z、2代目フィットのハイブリッドなどなどに、また北米ではアコードにも採用されました。
ちなみに2016年6月に、ホンダはCR-Zの最終型であるFinal labelの発売と、CR-Zの年内生産終了を発表しました。
これで17年間続いたIMAがご臨終となります。
成功作ではありませんでしたが、ホンダ初のハイブリッドシステムに敬意を表して念仏を・・・ナムナム
i-MMD(インテグレーテッド マルチモード ドライブ)
i-MMD(インテリジェント マルチモード ドライブ)
訂正
2018/06/05
読者の方から誤記のご指摘をいただきました。
i-MMDは「インテグレーテッド マルチモード ドライブ」としてありましたが、正しくは「インテリジェント マルチモード ドライブ」です。
訂正します。
【訂正文 終わり】
2013年に日本で発売されたアコードに採用されたハイブリッド システムがi-MMD。
アコードは、ナン代目と言うのがヒジョーに難しい。
写真のCR型は、アコードとしては9代目になりますが、8代目CU型を日本ではインスパイアとして販売したので、日本に限って言えばCR型アコードは8代目です。
面倒なので、ここではCU型インスパイアも8代目もアコードとして勘定します。
北米で、2004年に8代目CU型にIMAをくっつけてハイブリッド化。
Wikiに面白いことが書いてありました。
コンシューマー レポートによると、このアコード ハイブリッドの燃費は、V6アコードより2mpg、直4アコードより1mpgしか良くなかったそうです。
1mpgはおおよそ0.42km/Lです・・・ダメジャン(涙
ダメだったので、IMA式アコード ハイブリッドはわずか3年で販売中止となりました。
9代目が登場するのが2013年なので、インサイト同様に、次期モデルにバトンタッチする前に力尽きたわけです。
ソーいうわけで、このままじゃイカン! と満を持して2013年にi-MMDを引っさげて登場したのが9代目CR型アコードです。
IMAの汚名を返上できるか、i-MMD!
まずは構造です。
続いて作動です。
ご覧の通り、i-MMDはほぼシリーズ方式で、かつストロング ハイブリッドです。
高速巡航時以外はモーター駆動ですので、当然モーターも大出力の124kw。
車格が違うの直接比較するのもナンですが、新型プリウスは53kwですから、アコードのモーターの大出力ぶりが窺がえます。
ちなみに、i-MMDの正式名称は「Sport Hybrid i-MMD」
スポーツだって?!
ほぼモーターで走るクルマがスポーツ?!!!
ナンでもカンでもスポーツってつけりゃ・・・
と、ここで思い直しました。
アコード ハイブリッドが「スポーツ」なのかどうかの話は別として、でも、ハイブリッドだから、モーターだから「スポーツじゃない」という先入観は捨てなければなりません!
フォーミュラEなんてEVのレースも始まっているではないですか
オッサンたる者、新しい価値観を受け入れなければならないのです!
でも、ラジコンのサーキットで、
キュルキュルキュル~
というモーター音聞いても、あんまり心が躍らないのですよね~、実際
鼓膜をつんざくようなエキゾストノート
カストロールの焼けるにおい・・・
嗚呼、内燃機関は遠くになりにけり・・・つつあります(涙
i-DCD(インテリジェント デュアルクラッチ ドライブ)
IMAは、小さなインサイトや2代目フィットから大きなアコードにも採用されたましたが、成功作とはならず、その後大きなクルマ用としてi-MMDが登場しました。
そして小さいクルマ用として、2013年に3代目フィット(GK型)に搭載されたのがi-DCDです。
デュアルクラッチ トランスミッションとモーターを組み合わせた、他に例を見ないハイブリッドシステムとして話題になりました。
デュアルクラッチ トランスミッションについては、
コチラが詳しいのでご参照ください。
では、早速構造から。
下のイラストでは、各ギアの歯数、直径等は考慮していませんので、予めご了承を。
ご覧の通り、イラストとして見ることのできる機械の仕組みとしては、とても複雑です。
その複雑なのを理由に言い訳を申し上げますと、下に作動のアニメーションを載せましたが、100%の自信がありません。
ホンダが公開している数枚のイラストと睨めっコ、悪戦苦闘すること2時間。
まあ、こうとしか動きようがないだろう、という推測の下に作成しましたが、間違っていたら・・・ゴメンナサイ。
訂正
2016/09/18
不安が的中いたしました。
自信がなかったのですが、やはり作動アニメーションに誤りがあり、改訂させていただきました。
ご指摘いただきました読者の方、感謝を申し上げます。
また、間違った情報を公開いたしましたこと、お詫び申し上げます。
さて、お詫びが済んだところで言い訳です。
上記の作動アニメーションは、ホンダが公開している技術資料内の4枚のイラストから推測して作成しました。
ドーして間違ってしまったかというと、下のイラストが原因です。
このイラストはその4枚のイラストのうちの1枚を書き直したものです。
状況は、エンジン4速、モーター3速の合力モードです。
「デュアルクラッチトランスミッション(DCT)なのだから、4速状態であれば、次にシフトされる5速ギアはシャフトに固定されているはずだ」という先入観から、シャフトに固定されているのは3速ではなく5速だろうと誤った推測をしてしまったのです。
そして再考したのが、上の作動アニメーションなのです。
しかしこの通りであれば、「エンジン4速・モーター3速」から「エンジン5速」に移行するときには、「3速ギアがシャフトから切り離されると同時に5速ギアが固定され、さらに赤クラッチが接続される」という手順が必要になってしまします。
ドーでしょう?
「2組のクラッチの断続によって、あらかじめシャフトに固定されたギアへシフトする」
が、DCTの条件であれば、i-DCDは、部分的にDCTではないことになります・・・?
この件、もう少し調べてみますが、今日のところはこれにてご了承ください。
<訂正文 終わり>
このi-DCD、画期的なシステムというポジティブなイメージより、リコール多発というネガティブなイメージが付いてしまいました。
ちょっと興味があったのでググってみました。
- 2013年10月 トランスミッション コントロールユニットのプログラムの不具合
- 2013年12月 エンジン コントロールユニットのプログラムの不具合
- 同 トランスミッションドライバーユニットのプログラムの不具合
- 同 ハイドロスタティッククラッチアクチュエーターのプログラムの不具合
- 2014年2月 1速ギアのスリーブの不具合
- 2014年7月 エンジン コントロールユニットのプログラムの不具合
上記がi-DCDに関わるリコールで、初期生産のフィットという括りでは、さらに下記の2件が追加されます。
- 2014年10月 イグニッションコイルの交換
- 同 エンジン コントロールユニットにフィルターを追加
i-DCD関連で4回、その他で1回、ユーザーはホンダ ディーラーを訪れなければならなかったことになります。
2006年に法令が改訂されてリコールステッカーは運転席のドアを開けたBピラーに貼ることになりましたが、それ以前はリアガラスに貼られていました。
リコール修理を受けた回数だけ、リアガラスにステッカーが貼られるのです。
1990年代前半頃まででしょうか、輸入車の品質は褒められたものではありませんでした。
当然、リコールも頻発しました。
あのメーカーのスポーツカーも、あのメーカーの高級サルーンも、リコールです。
当時、輸入車業界に身を置いていたワタクシメ、1台のクルマに5枚リコールステッカーが貼ってあったのを目撃した記憶があります。
そして同僚とこんな会話を交わしました。
このままリコールされ続けたら、リアガラス中リコースステッカーだらけになって、後ろ見えないジャン!
上の画像は、新旧のリコールステッカーです。
ステッカーの大きさは3分の1くらいになりましたが、貼る場所が広大なリアガラスに比べれば劇的に狭いBピラーに変更されてしまいました。
フィットのリコールが続き、ステッカーの貼り場所がなくなるような事態にならないことを、心からお祈りします・・・ガンバレ、ホンダ!
次回は、あまりハイブリッドにやる気を見せていなかった日産です。
続く
|
TOPへ戻る