ハイブリッド車のまとめ

- 第7回 プリウス PHV -

2017/04/25 公開

その昔、第二次大戦の開戦前から初期の頃の話です。
その頃の戦闘機は一人乗り(単座)が主流でした。
武装は機関銃や機関砲で、一人乗りですから、銃や砲はパイロットが狙いを定めるために前を向いて搭載されています。
つまり弾は前にしか出ない。
となると、戦闘機同士の戦いでは、敵機の後ろについて自身の前方向に発射するしかないので、お互いに敵機の後方につこうとグルグルと回り合うワケです。
いわゆるドッグファイトというヤツです。

そこで、当時の各国空軍のエライ人は考えた。
敵機を自機の後ろにつけさせなければイイのだから、
もう一人、後ろ向きに乗員を座らせて後ろ向きの機関銃を撃たせればイイんじゃね?
そう、

複座戦闘機最強伝説の誕生です。

bf110 有名なのはドイツ空軍のメッサーシュミット・BF110。
後ろ向きの武装には7.9mmの機関銃1門。
defiant もっと極端なのはイギリス空軍のボールトンポール・デファイアント。
電動ポンプによる油圧式の旋回式7.7mm機銃4門をコックピット後部に装備しています。
これで後ろから撃たれる心配は激減、パイロットは安心して攻撃に専念できる・・・
と、空軍のエライ人はほくそ笑みました。
ところが実戦では、そうは問屋が卸してくれませんでした。

考えてみれば、ソリャソーだ。
「1グラムでも軽く」というのは、当時の戦闘機も今のクルマでも同じです。
にもかかわらず、重~い機関銃を余計に積み、乗員一人と、彼のための装備と空間。
BF110ではエンジンを余計に1基、デファイアントに至っては機銃4門にそれを旋回させるための油圧システム。
重くなった分だけ運動性はガタ落ちで、デファイアントは実戦配備から数か月で一線から退かされ、
バトル オブ ブリテンでは、ドイツの爆撃機をBF110が護衛し、そのBF110を単座戦闘機のBF109が護衛するという状況になってしましました。

欲張ってアレもコレもと詰め込みすぎるとロクなことにならないという好例です。



phv1 PHVはプラグイン・ハイブリッド・ヴィークルの略で、要は外部からも充電できるハイブリッド車です。
先代30型プリウスにもPHVグレードが存在しましたが、どちらかと言えばオマケ的存在でした。
現行プリウスPHVは本気のようで、普通のプリウスとは外観デザインまでも違います。
スペックを比べてみましょう。
参考までに、純粋な電気自動車の日産 リーフも載せておきました。
 
    プリウス      プリウス PHV      リーフ     
 モーター(駆動用) 出力(kw)555380
 トルク(N-m)  163 163254
 モーター(発電用) 出力(kw) 5.323
 トルク(N-m)  55 40
 バッテリー容量(kwh)  1.3 8.830
 バッテリー重量(kg)  24.5
(リチウムイオン)
120315
 車両重量(kg)  1,380 1,5301,450

まず注目していただきたいのは黄色のバッテリー容量です。
電気だけで68.2km(JC08モード)も走ることができるので、当然バッテリー容量は普通プリウスより大幅に増大されていて、且つ、重量も100kgも重くなっています。
まったく同じクルマではないので、プリウスPHVと普通プリウスを単純に比較するわけにはいきませんが、バッテリー重量増大に伴い、同等グレードで車両重量が150kgも増えています。

次は、水色の駆動モーター出力です。
プリウスとリーフを比べると、圧倒的にリーフのモーター出力が高い。
これば別にリーフがチョー高性能というワケではなく、プリウスはモーター出力で足らなければエンジンを始動するので、リーフほどの高性能モーターは不要なのです。
しかし普通プリウスではOKでも、プリウスPHVでは実はコレが問題になります。
「68kmは電気だけで走れます」と言ってしまっている以上、よほどのコトが無い限りその間にエンジンがかかるのはマズイ。
リーフよりも100kg近く重い上に、出力も7割弱となれば相当遅いわけで、お客様はカンカンに怒るわけです。
だからと言って、リーフ並みの高性能モーターを積んだら、ただでさえ普通プリウスより100万円以上も高い車両価格がさらに跳ね上がってします。

そこでトヨタのエンジニアは考えた・・・
と、その前に、THSの作動原理です。



このアニメーションを含む詳細はコチラでご覧ください。

気を取り直して・・・
そこでトヨタのエンジニアは考えた。

高性能モーターにしなくたって、もう1個モーター付いてるじゃん!

そう、THSには発電用としてもう一つのモーターが装備されているのです。
これを必要に応じて駆動用として使用すれば、高性能モーターは不要となるのです。

それを聞いたワタクシメは、膝を打ちました。

ナルホド、ナルホド!
じゃあ、あとは簡単だ。
油圧ポンプをくっつけて、コントロールユニットをもう1個追加して、油圧式多板湿式クラッチを作動させてプラネタリキャリアを必要に応じて固定してやれば、ウマくいくはずだ!
オッと、エンジンがかかっていな時の話だから、油圧ポンプはバッテリー駆動の電動式だ!

ダメです。
これじゃあ、トヨタの社員にはなれません。

大事な電気を喰う電動式油圧ポンプなんてもっての外ですし、新たな油圧回路やコントロールユニットなんて、お金もかかるし重くもなってしまう。

で、トヨタのエンジニアが考えたのがコレ↓ ワンウェイクラッチです。



そのワンウェイクラッチを利用したPHVのシステムです。
(遊星ギアの原理はコチラを参照してください。)


スプリングを押し縮める力とか、ピンと内側歯車との摩擦とか、少々の機械的損失は発生するでしょうが、油圧ポンプとか油圧多板クラッチの制御とかより、断然少ない損失で目的を達成しました。
まったく、ヨク考えたものです。




訂正

2017/05/25

横浜で開催された自動車技術展で確認してまいりました。
上記ワンウェイクラッチについて「ピンと内側歯車との摩擦」と書きましたが、誤りでしたので、お詫びして訂正させていただきます。

エンジンが始動し外側歯車が回転すると、ピンには遠心力が発生します。
遠心力がスプリング力に打ち勝つと、ピンは外側へ押しやられて内側歯車とは接触しなくなります。
エンジン回転数がおよそ400rpmでピンは浮き上がるので、実用上はピンと内側歯車の摩擦損失は0となるそうです。

【訂正 終わり】



PHVは正義なのか?

このプリウスPHVに限らず、とくに欧州勢はPHV花盛りです。 猫も杓子もPHV!

PHVにあらずんばクルマにあらず!

と、言わんばかりです。
でも、本当にPHVは正しい解なのでしょうか?

実はカラクリがあります。
欧州のCAEFが問題なのです。
このCAEFはCO2排出量(燃費)規制で、各自動車メーカーは販売するクルマの平均燃費が規定値を下回ると罰金を払わなければなりません。

2021年までにCO2排出量を95g/kmに抑えなければならず、これを燃費に置き換えると24.4km/Lとなります。
ただしこの燃費は欧州の測定方法によるもので、日本のJC08モードでは31km/L程度になると言われています。
そうなりますと、大型車が販売の中心となる高級車メーカーは特に辛くなるわけです。
そこで用意された抜け道がECE R101 rev.3という排ガス・燃費規制基準。
これによると、以下の式でPHVの燃費が計算されます。

CO2排出量(g/km) = (電気による走行距離 × 電気走行時のCO2排出量 + 25(km) × ハイブリッド走行時のCO2排出量)÷ (電気による走行距離 + 25(km))

ちょっと、ややこしくなってきました。
上の式の25(km)は、電気を使い切った後に再びバッテリーが充電される間にガソリン(ハイブリッド)で走行する距離で、定められた値です。
また、電気走行時のCO2排出量は言うまでもなく0です。

なので、簡単にしてしまうと
PHVのCO2排出量は、

CO2の量 = 1キロをハイブリッドで走ったときにでるCO2の量 ÷ (電気だけで走る距離 + 25キロ) ÷ 25キロ

となります。
この式に、プリウスPHVのJC08モード燃費をムリクリあてはめて計算してみましょう。

プリウスPHVのハイブリッド走行時燃費は37.2km/LなのでCO2排出量は62g-CO2/km。
電気だけで走れる距離が68.2km。
よって、

62 ÷ (68.2 + 25) ÷ 25 ≒ 16

さらにこれを燃費に換算すると・・・145km/L・・・

145km/L!!
エエッ! ウッソ~だ~!!

そう、ウソのようなカラクリなのです。

もちろん、プリウスPHVが1リットルのガソリンで145キロも走れるわけがありません。
あくまでこれは、

「ああ、PHVですね。イイですネ~、PHV。じゃあ特別に、CO2排出量は燃費145km/Lとして計算してあげますよ~。」

という、PHVには超アマアマの規制なのです。

ワタクシメ、邪推しますに、

環境強硬派のEUの役人が

2021年には95g/kmだ~ァ!

と叫び、
自動車メーカーは

そんなのデキるわけねェェェェ!

と、叫んだわけです。
そこで「まァまァ」、と現実的な役人が間に入って・・・・

袖の下が動いたのか、忖度であったのかは知る由もありません(+_+)


さらに邪推を進めると出てくるのが某国陰謀論です。
考えてみてください。
EUの2021年規制は、日本のJC08モード燃費で31Km/Lを超えればクリアできるのですよね。
じゃあ、プリウス並のクルマばかり作ればOKじゃないですか!
でも、ありますよ~ネ。
大きくて重いクルマを作ってる国が。
丸印に3本線とか、丸印に青と白とか、丸が四つ並んでいたり、トランクのつもりで開けたらエンジンが入っているメーカーを抱える国が。
そう、EUを支配しているあの国です。

そうなのです! PHVの普及は、あの国の陰謀・・・・なのかどうかはシリマセン(+_+)



さて、冒頭に登場したメッサーシュミット・BF110とボールトンポール・デファイアントです。
欲張ってアレもコレもと取り入れた結果、失敗作に終わってしまいそうになったのですが、
大戦中期から後期にかけて、レーダーを装備して夜間爆撃機の迎撃に活躍したそうです。
使い方と、使うときと、使う場所さえ上手く選べば、活躍できるわけです。

ですから、プリウスPHVも。
平日は通勤で数十キロしか走らず、週末はちょっと遠出、という使い方なら、BF110やデファイアントのように活躍できるのではないでしょうか。

ただし、100万円のエクストラコストのモトが取れるかどうかは、これもシリマセン・・・。

続く

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