オートマのまとめ
- 第4回 ステップ式AT トルコン その2-
2015/04/05 公開
前回、トルコンが速度をトルクに変換するというお話をしました。
今回は、その仕組みについてお話しします。
最初に、オッサンの方々に謝罪しなければなりません。
前回でてきた右図の向かい合った2組の羽根、実はトルコンではないのです
なんじゃと、コリャ~
トルコンじゃちゅうから、トルコンだと思って話をきいてりゃ
いまさらトルコンじゃないっちゅうのは、どういうことじゃ~
お怒りごもっとも。
でも、ちょっと考えてくださう。
トルコンは速度をトルクに変換すると申し上げましたが、世の中、交換するのにだってタダってわけにはまいりません。
ほら、金持ち父さんならご存じのはずです。
円を同じ価値のドルに換えるだけでも手数料がかかります。
リスクを厭わない金持ち父さんが円をトルコリラとか南ア・ランドとかに換えようとすれば、もっと高い手数料が取られます。
円を株や国債などの証券に換えようとしても手数料が取られます。
そう、ナンにだってお金がかかるのです。
閑話休題
扇風機の羽根を2組向き合わせ、その間を油で満たしたて動力を伝達するものは、流体クラッチ、流体継ぎ手、フルードカップリングなどと呼ばれていて、多くの機械に採用されています。
ワタクシメの知るところでは、自動車のファンクラッチに使われています。
乗用車では最近見かけなくなった、ベルトでラジエーターファンを回すアレです。
その昔、縦置きエンジンのクルマでは、必ずラジエーターとエンジンの間にありましたよね、コレ。
また、第二次大戦中のドイツの航空機用エンジンで、スーパーチャージャーを回すのにも使われていたそうです。
これらのフルードカップリングは、入力に対して出力のトルクが大きくなることはありませんし、その必要もありません。
では、一体ドコのドイツが速度をトルクに変換してるのでしょう?
それはドイツ人の・・・
と、話が続けばオヤジギャグの完成ですが、残念ながらググってみましたがトルコンの発明者を見つけることができませんでした・・・アシカラズ
話を戻します。
実はトルコンには、エンジン側の羽根とタイヤ側の羽根の間にもう1つ、ステーターと呼ばれる羽根があるのです。
つまりこんな感じ。
では、ステーターの作動をみてみましょう。
まずはステーターのない、つまりトルコンではない、ただのフルードカップリングの場合です。
エンジン側の羽根とタイヤ側の羽根の回転数が大きいときには、タイヤ側の羽根を回転させてエンジン側の羽根に戻ってきたATFは、エンジン側の羽根を減速する方向に力を加えます。
これでは、トルクの増幅どころかトルクを減少させかねません。
そこで羽根と羽根の間にステーターを追加します。
タイヤ側の羽根から戻るATFはステーターに当たって向きを変え、エンジン側の羽根を加速する方向に力を加えます。
この作動によって、エンジン側の羽根とタイヤ側の羽根の回線速度差が大きいときは、入力に対して出力のトルクが増幅されるのです。
なんと素晴らしい! これは廃物利用ではありませんか! まさにモッタイナイの精神!
この「モッタイナイ」が、トルコンが速度をトルクに変換する秘密だったのです。
ここで思い出していただきたいのが、前回のトルコン性能表です。
今回注目していただきたいのが青い線で、横軸が速度比、縦軸が伝達効率です。
速度比が0から0.7くらいまでの間、つまり運転手が停止状態からアクセルを踏んで、エンジン回転数がグワッと上がり、エンジン側の羽根の回転数も上って、それから徐々にタイヤ側の羽根の回転数が上がってエンジン側の羽根の7割程度の回転数に達する間は、ステーターがうまく働いてトルクが増幅されるということを表しています。
ところが、それ以上にタイヤ側の羽根の回転数が上がると、伝達効率が落ちてきます。
これがどういうことかというと、
エンジン側の羽根とタイヤ側の羽根の回転差が小さくなると、今までうまくATFの流れを変えていたステーターが邪魔になってATFの流れが乱れてしまうのです。
この伝達効率低下を防ぐため、ステーターにはワンウエイクラッチという、1方向にしか回転しない装置がついています。
トルク増幅している間は、ATFの流れの方向がステーターを回転しない方向に押すため、ステーターは回転せずにATFの流れの向きを変えるのですが、エンジン側の羽根とタイヤ側の羽根の回転数差が小さくなると、ATFの流れはステーターを回転する方向に流れるため、ステーターが回転してATFの流れを邪魔しないようになります。
このステーターが回転している領域が、上の性能表のカップリングレンジとなります。
どうでしょう、多少ゴチャゴチャしましたが、ご理解いただけたでしょうか?
このステーターの働きによって、トルコンはただの流体継ぎ手ではなく、トルクコンバーターとして成立し、かつてはオートマチックトランスミッションの主役である「主」変速装置の名前をほしいままにしていたのです。
続く
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