オートマのまとめ

- 第7回 ステップ式AT 変速部 その2-

2015/04/25 公開
2016/07/09 追記

今回は、いよいよ変速の仕組みについてお話しいたします。
まな板に乗るのはちょっと古めの4速AT。
まずは下の図を見てください。

cross01

これじゃあ、ナニがナンだかわかりませんよね。

で、次に右のアニメーションを見てください。
お解りいただけましたでしょうか?

さらに、上図の最上部の青はトランスミッションのケース。
灰色のラインが各要素を結び、その間の緑色の丸が、前回お話ししたクラッチやブレーキです。
これらのクラッチやブレーキには、本来フォワード&リバースクラッチとか、ローアンドリバースブレーキとか、プロレス技のようなカッコいい名前がついているのですが、ここでは簡略化してクラッチAとかBとします。

さて、では停車状態からATシフトレバーをPレンジからDレンジにシフトしましょう。

1速

cross01

上図が1速の状態です。
  • エンジン回転が2列目サンギアに入力される。
  • ブレーキBとクラッチCが作動し、2列目インターナルギアが固定される。
  • 2列目プラネタリーキャリアから出力。
  • 2列目プラネタリーギアセットは、サンギア:入力、インターナルギア:固定、プラネタリーキャリア:出力、となるため、入力は減速されてから出力される。

2速

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上図が2速の状態です。
  • ブレーキAが作動し、1列目サンギアを固定する
  • クラッチCが作動し、1列目プラネタリーキャリアと2列目インターナルギアを接続する。
  • エンジン回転が2列目サンギアに入力される。
  • 2列目プラネタリーキャリアと1列目インターナルギアは接続されているため、
  • 1列目は、サンギア:固定、インターナルギア:入力、プラネタリーキャリア:出力、となり、減速される。
  • 1列目プラネタリーキャリアの回転はクラッチCを介して2列目インターナルギアに伝わる。
  • 2列目のプラネタリーギアセットは、サンギア:入力、プラネタリーキャリア:出力、インターナルギア:ゆっくり回転、となるため1速よりも小さな減速比で減速される。(2速、ヤヤコシヤ・・・・)

3速

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上図が3速の状態です。
  • クラッチBが作動し、2列目サンギアと1列目プラネタリーキャリアが接続する。
  • クラッチCが作動し。1列目プラネタリーキャリアと2列目インターナルギアを接続する。
  • 2列目サンギアの回転と、2列目インターナルギアの回転数が等しくなるため、2列目プラネタリーキャリアは2列目サンギア、インターナルギアと一体になって回転する。
  • 入力と出力が等しくなるため、減速比は1となる。(直結)

4速

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上図が4速の状態です。
  • クラッチBが作動し、エンジン回転が1列目プラネタリーキャリアに入力される。
  • ブレーキAが作動し、1列目サンギアを固定する。
  • 1列目のプラネタリーギアセットは、サンギア:固定、プラネタリーキャリア:入力、インターナルギア:出力、となるため増速される。

リバース

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上図がリバースの状態です。
  • クラッチAが作動し、エンジン回転が1列目サンギアに入力される。
  • ブレーキBが作動し、1列目プラネタリーキャリアを固定する。
  • 1列目のプラネタリーギアセットは、サンギア:入力、プラネタリーキャリア:固定、インターナルギア:出力、となるため逆転となる。

いかがでしょうか?
お解りいただけましたでしょうか?
実はこのオートマ、ご主人様の知らないところで、ケッコー難しいことをしていたのですネ。
たかが4速でコレですから、8速とか9速になったら・・・
あるいはラビニヨ式プラネタリーギアなんてのが使われていたら、どこがどうなってるのかサッパリ・・・



その昔、クルマにキャブレターなんてモノが使われていたころの話です。
アクセルペダルをググッと踏み込んだワタクシメは、
アクセルワイヤーが引かれ、
スロットルバルブがバッと開き、
加速ポンプがギュッと押されてガソリンがインテークマニホールド内に噴射され、
続いてメインジェットからもガソリンがドバっと噴出し、
エンジン回転数がブオッと上がる・・・
なんて様子を想像しながら運転を楽しんだものです。

なので、今回でステップ式オートマの仕組みを理解下さったオッサン方々も、
グワッとアクセルペダルを踏み込み、
フォワードクラッチと、オーバーランニングクラッチが作動し、
1列目プラネタリーキャリアと2列目サンギアが接続され・・・
なんて様子を想像しながら運転したら・・・・・・事故りますね、コリャ・・・


追記

なんて様子を想像しながら運転したら事故ってしまいそうでありますが、それでもトランスミッションが作動する様子はイメージはしたい。
とご所望のオッサンのために、4速ATの作動シミュレーター的なアニメーションを作ってみました。(そんなオッサンはいない、というツッコミはゴカンベン)



ちなみに、上図のギアの歯数は、サンギア:24、インターナルギア:48、プラネタリーギア:16となっています。
さらにちなみに、実際のトランスミッションでは、N/Pレンジ時でもいくつかのクラッチを作動させておいて、Dレンジに入れたときにすぐに発進できるようにとか、一方向にしか動力を伝えないワンウエイクラッチを設けて、特定条件ではエンジンブレーキが効かないようにするなどの制御もしていますが、ここではイメージなので、それらは割愛です。

さて、それでは全国の4速ATにお乗りのオッサン方。
上記のアニメーションを参考に、アクセルペダルをガバッと踏み込んで刹那のキックダウンの変速、その後の加速のための変速・・などなど、トランスミッションの作動をイメージしながら運転をお楽しみください。

実はワタクシメ、このアニメーション同様に、遊星ギア4組を使った7速ATまでは各レンジでのそれぞれのギアの回転数を計算したことがあります。
4組も遊星ギアがありますと、1列目で減速して、2列目は増速して、3列目は加減速なし、4列目で増速・・・なんて制御を行っています。
これをイメージしながら運転するとなると・・・やっぱり事故ります。
したがいまして、トランスミッションの作動を想像しながら運転するのは4速ATまでとし、多段化が進んだ高級車にお乗りのオッサン方はメカケとのデートのことでも想像しながら運転してください・・・。

続く


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