オートマのまとめ

- 第8回 CVT その1-

2015/05/04 公開

punt CVTと言えば、ワタクシメには思い出があります。
アレは1990年代後半のことです。
当時、輸入車会社に勤務していたワタクシメは、本国に出張いたしました。
このときは結構長期で、数ヶ月の滞在でした。
その間、レンタカーを借りたのですが、それがCVTを搭載したフィアット プントだったのです。

ある日曜日のことでした。
ナントカⅢ世の建てたナントカ城の見学に出かけました。
見学の後、帰途に就こうと駐車場のプントに乗り込み、ブレーキペダルを踏んでエンジンを始動し、Dレンジにシフトしようとシフトレバーに手を置いたときです。
「カラリンコ」と、何か小さな金属が転がり落ちる音が耳に届きました。
コインでも落としたのだろうと、さして気にもせずに、シフトレバーのロックボタンを押し・・・・
押し・・・
押し・・・
アレ? 押せない・・・
当然、ロックボタンが押せなければシフトレバーはPレンジから動かないわけで、Pレンジのままではプントも1mmも動きはしない。 さあ、困った。
国際運転免許には、「日本の免許証も携帯せよ」との記述があるので、ワタクシもきちんと日本の免許証を携帯しており、免許証ケースの中にはJAFの会員証も入っていました。
が、

でもさすがに、ココまでは来てくれないよな~JAFも・・・

さあ、頭の中が真っ白になりかけたそのとき、「カラリンコ」と音がしたことを思い出しました。
神仏に祈る気持ちで、センターコンソールの辺りをまさぐってみると・・・ありました。小さなネジが・・・。
緩み止めの工夫がナンにもない、小さなネジ。
どんな窮地に陥っても冷静沈着なワタクシメは(←ホントカヨ!)、慌てることなく、ボールペンのキャップのノートとかに引っ掛けるフックの部分の先っぽで、その緩み止めの工夫がナンにもない、緩んで外れて当然のネジを締め、異郷の地での窮地から脱したのです。


その昔、こんなジョークを聞いたことがあります。
hose エンジンとラジエーターをつなぐホースを「く」の字型に設計できるのは日本人とドイツ人しかいない。
エンジンは、ブルブル振動します。アクセルをガバッと踏み込めば、グワッと傾きます。
しかしラジエーターが固定されている車体は動かない。
となれば、エンジンとラジエーターをつなぐホースは、ブルブルとかグワッを吸収しなければならない。
そこで日本人とドイツ人は、ラジエーターホースを「く」の字とかに曲げて設計する。
が、イギリス人とかアメリカ人とか、フランス人とかイタリア人はそれができない。
ので、アクセルをガバッと踏み込んでエンジンがグワッと傾けば、ラジエーターホースはスポンと抜け、冷却水が吹き出し、あっという間にオーバーヒート・・・
まあ、いくら英米仏伊人といえども、エンジンがブルブル、ガバッとするくらいは気づいていたはずで、ラジエーターホースを一直線に作ればどんな悲劇になるかはわかっていたことでしょう。
ですので、このジョークは、彼の国のクルマの低品質を指摘した(嘲笑った)極端なたとえ話にすぎません。
さて、問題はワタクシメが遭遇したシフトレバーのネジです。
エンジンと一体のトランスミッションにワイヤーなりロッドなりで接続されたシフトレバーにも、言うまでもなくエンジンの振動は伝わってきます。
となれば、緩み止めの工夫をナニもしていないネジでは、時間の経過とともに緩み、最後にはあのプントのようにカラリンコと落下してしまうわけです。
ラジエーターホースは「く」の字に設計できるイタリア人も、シフトレバーが振動することは思いつかなかったようです。

恐るべし、ラテンクオリティ!




閑話休題
話がまったくアサッテに飛んでしまいました。
で、CVTです。

CVTCVTはContinuously Variable Transmissionの略で、直訳すると連続的可変変速機となりましょうか。
一般的には 無段階変速機)と言われるようです。
つまりステップ式ATのような段付でなく、ローからハイまでシフトショックなしにスムーズに変速できるわけです。


600 Wikiによると、最初にCVTを採用したのは1958年、オランダDAF社製のDAF600というクルマだそうです。
動力伝達にはゴムベルトを使っていたそうです。
エンジン排気量590ccだったそうなので、ゴムでもOKなくらい出力も低かったのでしょうね。
イヤ、OKじゃなかったから、その後が続かなかったのでしょう(タブン)。

66 1970年代になると、DAFの技術者ヨーゼフ・ファン・ドールネが耐久性の高い金属ベルト製のCVTを開発しました。
DAFを買収したボルボが、ボルボ66にこのCVTを採用したそうです。

justy 日本で最初にCVTを採用したのは、スバル ジャスティ。
1987年のことだそうです。
初代レガシィの登場が1989年ですから、それ以前のスバルと言えばレオーネで、決してメジャーなメーカーではありませんでした。
マイナーなメーカーのマイナーな車種に搭載されたマイナーな技術・・・
「こりゃ瞬殺だな・・・」
と予想したものですが、今となってはこのCVT、「第1回 オートマの種類」で述べたよう、世界中で生産されるオートマの2割程度を占めるほどまでになりました。
ゴメンナサイ、スバルさん。
このスバル ジャスティCVT搭載車、普通のATより値段が高かったせいで、国内では商業的に成功しなかったそうですが、アメリカでは3年連続燃費ベストカーに選ばれるほど燃費が良かったそうです。




CVT2 では、CVTの構造です。
ステップ式ATよりずっと単純な構造です。
エンジン出力は、まず黄色の発進装置に入ります。
現在ではトルコンが使われていますが、ジャスティーの頃は電磁クラッチでした。
入力軸と出力軸の間に鉄粉を詰めておいて、鉄粉の周りに電気を流して磁石にすることで動力を伝えます。
次が紫色の前進/後進切り替え装置。
ステップ式ATのページにあったプラネタリーギアを用いて切り替えます。
その後は、プライマリープーリー(緑) → ベルト(青) → セカンダリープーリー(赤)と伝達し、出力されます。
プーリーの間のベルトの代わりにチェーンを使っている機種もあります。

で、変速の方法は以下の動画で一目瞭然(ノハズ・・・)。
原理としては、自転車の変速ギアと同じです。
ペダル側ギアの径が小さく、タイヤ側ギアの径が大きければペダルは軽いけれとスピードは出ない。
逆にペダル側ギアの径を大きく、タイヤ側ギアの径を小さくすればペダルは重いけれどスピードは出る。
CVTの場合も、エンジン側のプライマリープーリー径を小さく、タイヤ側のセカンダリープーリー径を大きくすれば、マニュアルトランスミッションの1速の状態。
プライマリープーリー径を大きく、セカンダリープーリー径を小さくすればマニュアルトランスミッションの6速の状態となります。
もちょっとわかりやすくすると、下の動画になります。



ステップ式ATなどと違い、直感的に変速の様子がわかります。
ですがこのCVT、1点だけ直感通りにいかないことがあります。
自転車のチェーンでも、井戸の釣瓶の滑車でも、動力はチェーンや綱の引く方向に伝わります。
しかしCVTでは、ベルトの押し方向で動力を伝えるのです。



この「押し」方向、2つ問題があります。
1つ目は、プライマリープーリーとセカンダリープーリーが一直線になっていればベルトは曲がることなく動力を伝えることができますが、
万が一2つのプーリーにズレが生じた場合、ベルトはクニャッと曲がってしまうこととなり、故障の原因になる。
なので、CVTを製造する場合には、ソコの辺りの精度を出すのが結構大変そうだそうです。
で、スバルのエンジニアは考えた。

押してダメなら引いてみろ!

と。
そこで、最新のスバルのCVTであるリニアトロニックでは、「押し」方向で動力を伝えるそうです。

そして2つ目の問題は・・・次回以降に。

続く


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