オートマのまとめ

- 第12回 AMT その2 番外編 -

2015/06/01 公開

光陰矢のごとし

オッサンであれば、誰もが叩きのめされるほど実感しているはずです。

「最近の若い奴らは、みんなオートマ免許で・・・」
と嘆いていたのも今は昔。
オートマチック限定免許が導入されたのが1991年ですので、オートマ免許第一世代もすでに40代。
となると、当時「若い奴らは・・・」と嘆いていたワタクシメは・・・

オッサンの皆様には「ダブルクラッチ」や「ヒール&トゥ」についての説明は不要であると思っていましたが、
マニュアル経験のないヤング・オッサンのためにちょっと説明いたします。

前回にお話しした、変速時にギアの回転を合わせてくれるシンクロメッシュ機構ですが、
昔のMTはこれの性能がイマイチで、特にシフトダウン時にはギアが入らない時がままありました。
また、オー昔のMTには、そもそもシンクロメッシュ機構がついていなかったそうです。
で、シンクロメッシュ機構に替わって回転合わせをするのが「ダブルクラッチ」で、
「ヒール&トゥ」は、コーナー進入時に、コーナー脱出に備えてブレーキを踏みながらダブルクラッチでシフトダウンする操作です。

ダブルクラッチ

ダブルクラッチの操作手順を文章にすると、
  1. クラッチペダル踏む
  2. ニュートラルにシフト
  3. クラッチペダルを放す
  4. エンジン空ぶかし
  5. クラッチペダル踏む
  6. シフトダウン
  7. クラッチペダル放す
で、その理屈は以下の通りです。




roadster その昔、初代ユーノスロードスターの話です。
当時全滅していたオープン2シーターですから、売れるのか売れないのか、まったく見当もつかない
となれば、開発に当たって、お金をかけなきゃならないところにはお金をかけても、それ以外はなるべく安く済ませたい。
んじゃ、エンジンはファミリアのを改造して、ミッションはルーチェタクシーのを改造して・・・
となっても何ら不思議はありません。
そのためか、同じ1,600ccエンジンでも、当時名機と言われたホンダZC型あたりと比べると、ナンとも・・・
ミッションも、シフトストロークが短くてとてもよかったのですが、2速のシンクロがナニでして、ダブルクラッチを使わない限り頑としてシフトダウンを拒みました。
それどころか、冬の朝一番など、2速へのシフトアップさえままならず、
当時クルマ通勤していたワタクシメは、家の前の路地から幹線道路に出るときなど、ほとほと困り果てたものです。
そのため、良いと噂される高~いミッションオイルや添加剤を色々試しました。
まあ、困ったものではありましたが、

それはそれで、楽しかったな~ァ。

さて、このダブルクラッチ、もう一つ効能があります。
ダブルクラッチを使わずにシフトダウンした場合、クラッチをつないだとたんエンジンブレーキが効いて、乗員の体は前方に投げ出されて大変不快です。


これを防ぐためには、クラッチを滑らせながらゆっくりつなぐか、ダブルクラッチを使うか、なのですが、
漢は当然、ダブルクラッチであったわけです。

上にも記しましたが、ヒール&トゥとは、このダブルクラッチをブレーキを踏みながら行うことです。
コーナー進入時には、コーナー脱出の加速のためにシフトダウンしなければなりません。
で、右足のつま先でブレーキペダルを踏みながら踵でアクセルペダルを操作、左足はクラッチペダルで、左手はシフトレバー操作、右手はコーナー進入のためにステアリング操作。
そして当然、これらの操作は、それぞれに最適な量を、それぞに同期させながら行わなければなりません。
これだけの複雑な操作を、まるで呼吸をするかのように自然にこなすマニュアルトランスミッション・ドライバー・・・・素敵です。



さて、何故にAMTの項でダブルクラッチの話をしたかと申せば、
もしこの自動手動変速機が、シフト操作とクラッチ操作のみを自動で行うのであれば、シフトダウンの度に乗員の体は前後に揺さぶられ、大変不快な乗り物になってします。
そこで、アルファロメオやフェラーリーのエンジニア氏は、シフトダウンのタイミングに合わせてエンジン回転数を上げてやる制御を付け加えました。
これがブリッピング(空ぶかし)するものという意で、ブリッパーと呼ばれました。
たしかフェラーリーではスロットルキッカーと呼んでいたと記憶します。

このブリッパー、とても快適なので、AMTに限らず、DCTやステップATにも採用されました。
ステップATでは、当初はスポーティーモデルのみに搭載されていましたが、今ではフツーのセダンやミニバンにも搭載されています。
そしてナニが腹が立つかと言えばこのブリッパー、コンピューター制御なので当たり前と言えば当たり前ですが、
ワタクシメより回転合わせが上手い。
なにより、絶対に失敗しません。
なので、速く走ることが目的なのであれば、メンドクサイ操作を必要とするマニュアルよりも、マニュアルモード&ブリッパー付のオートマの方がもはや優れてると言えます。

現在、ポルシェ911の高出力バージョンであるGTS以上にはDCTしか設定がありません。
ポルシェ社曰く、
「速く走るため」
だそうです。
つまり、「FUN」であることを除けば、もはやマニュアルに利点はないと・・・。

日産 フェアレディーZのマニュアル車には、シンクロレブコントロールという商品名で、何故かこのブリッパーが付いています。
イエイエ、間違いではありません。
「マニュアルトランスミッション車」に「ブリッパー」が装備されているのです。
ワタクシメは不思議でなりません。
ダブルクラッチでシフトダウンして急加速したいから、オッサン方はわざわざメンドウなマニュアルを選ぶのではないでしょうか?
ヒール&トゥでコーナーに進入したいから、マニュアルなのではないでしょうか?

ワタクシメが不勉強なだけで、北米には「マニュアルがいいけど、シフトダウンは面倒だな・・・」というユーザーが多いのでしょうか?
それとも、コレを企画したエンジニア氏が頓珍漢珍なのか・・・?
前者であることを切に願います。

いずれにしても、世界有数の自動車メーカーである日産が否定るほど、すでにダブルクラッチやヒール&トゥに存在価値はなくなってしまっているのです・・・

中島みゆきさんは歌いました。

♪世~の中は い~つも変わっているから~
頑固者だけが 悲しい思いをする~♪


で、思いつきました。
マニュアルトランスミッションを愛するオッサンの皆様

ダブルクラッチとヒール&トゥを世界無形文化遺産に登録しましょう!

そうすれば、遺産保護の観点から、メーカーもマニュアル車を残さざるを得ないでしょうし、
ヒール&トゥができるオッサンも保護されるはずです!

そして何より、若い女性を助手席に乗せれば、

「あら、オッサンさんはヒール&トゥができるんですね、素敵!」


となること請け合いです(ウヒヒヒヒ)

続く


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